ここ数年、大きな注目を集めたワーケーション。ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語であり、その名の通りリゾート地や自然に囲まれたグランピング施設、コテージなどで休暇を楽しみながら仕事をするというスタイルです。企業や組織としてチームでワーケーションを実施することもありますが、新型コロナウイルスによって普及いたテレワークの一形態でもあります。
一見すると楽しそうで、理想的な働き方のようにも思えるワーケーション。多くのリゾート施設などでもワーケーション向けプランなどが展開されて業界では盛り上がりを見せていたものの、いまいち流行らないという状況です。ここではそんなワーケーションの現実をご紹介します。
ワーケーションは注目されているのに流行らない理由
「ワーケーション」という言葉はこの数年で作られた言葉のようなイメージを持たれがちですが、実は考え方自体は、10年以上前から存在しています。しかしそれほど普及することなく、この数年の新型コロナウイルスの蔓延による新しい生活様式のひとつとして広がって行きました。
2021年3月には厚生労働省の「テレワークガイドライン」においても、ワーケーションをテレワークの一形態と位置付けています。
このように一般的に知られるようになり、注目を集めているにもかかわらず、実際にワーケーションを実施したという話はあまり聞きません。それはどうしてなのでしょうか?
メリットをあまり感じない
いきなりワーケーションと言われても、何をすればいいのかわからないという方が多いのではないでしょうか。休暇を楽しみながら仕事をすると言われても、どんな生活になるのかイメージしにくいものです。
そもそもワーケーションには大きく分けて2つのスタイルがあります。1つが休暇型ワーケーションで、これは休暇が主目的であり、あくまでバケーションを楽しみながらその合間で仕事もするという形。休暇がメインなので企業の福利厚生のひとつとして取り入れられているケースもあります。2つ目が業務型ワーケーション。こちらは仕事が主体のワーケーションで、合宿のように組織で行われるケースが中心です。
どちらのスタイルにしても、休暇中に仕事をすることに、わざわざリゾート地などで仕事をすることにメリットを感じないという方も多いでしょう。気分転換にはなりますが、休暇であれば仕事を忘れて楽しみたいと考えてしまいがちです。また、仕事をするのであれば集中した方が効率的だと考える方も多いかもしれません。そうなるとワーケーションにメリットを見いだすことが難しくなります。
ワーケーションが可能な人員が限定的で不公平感が生じる
同じ企業や組織であっても、部署・部門毎に仕事の内容や働き方は異なります。それだけにワーケーションが可能な人員が限定的になってしまうケースも少なくありません。
テレワークにおいても、適用可能な人員が限定的であることから不公平感が生じるという問題がありました。増して休暇を兼ねたワーケーションともなればさらに不公平感が強くなってしまいます。そのため、企業として導入を躊躇ってしまうというケースもあうようです。
組織の制度上の問題
ワーケーションを導入するとなれば、組織の制度を大きく変更する必要に迫られる可能性があります。特に休暇型ワーケーションの場合、勤怠管理、労災適用の判断が難しいという問題もあります。
これらの問題をすべてクリアするために組織の制度改革を行ってまでワーケーションを導入すべきか…と考えた結果、結果として導入しないという選択肢を選ぶ企業が多くなってしまうのかもしれません。
ワーケーションが失敗する理由と成功させる方法
前述の通り、さまざまな理由からワーケーションがいまいち流行らないという状況が続いています。それでもワーケーションにはイノベーションの創出や人材定着率の向上、有給休暇の取得促進など多くのメリットがあります。そこで、これから実施を検討しているという方も多いでしょう。
しかし、ワーケーションを実施したものの失敗してしまったというケースも少なくありません。ここではワーケーションが失敗に終わってしまう理由と、成功させるためのポイントを詳しくご紹介します。
ワーケーションが失敗する理由とは?
ワーケーションは比較的新しい試みであることから、企業・従業員側としてもどのように活かせばいいのかわからずに、効果が出ないというケースが考えられます。組織としての制度やシステムの構築も不十分で、基本的な勤怠管理や、コミュニケーションが取りにくくなり、仕事の効率が落ちてしまう可能性もあります。
要するに準備不足です。形としてワーケーションを導入しても、具体的にどのように活かすのか、そして活かすためにはどのような準備が必要なのかといった点を整理し、体制を整えなければ失敗してしまうでしょう。
また、テレワークにおいても一部で問題になりましたが、仕事を簡単にサボれてしまうことから生産性が下がるという可能性もあります。結果として業務としても休暇としても中途半端になってしまうとワーケーションは失敗に終わるでしょう。
そもそも、成功なのか失敗なのかの判断が難しいという問題もあります。ワーケーションの効果は評価することが難しく、実施したはいいものの結果がすぐに出るわけでもなく、判断に迷ってしまうことになるのです。適切に評価できなければ、これも成功とは言えないでしょう。
ワーケーションを成功させるためのポイント
これまでご紹介してきた通り、ワーケーションはさまざまな理由から失敗してしまう可能性があります。そこで、最後にワーケーションを成功させるためのポイントをご紹介します。
失敗の理由でもお話しましたが、ワーケーションを実施するにはさまざまな準備が必要です。これまでと違ったスタイルで仕事をすることになるため、まずは明確なルールの設定を行います。休暇と業務を組み合わせた生活スタイルになるため、ある程度の自由は必要ですが、ルールがなければ従業員の管理もできません。
続いて業務に必要なシステムの導入です。オフィス以外の場所でもスムーズに業務ができるようにチャットツールや情報共有ツール、バーチャルオフィスなどの導入が必要となるケースもあるでしょう。
このようにワーケーションを実施するための環境の構築をしっかりと行うことによって、成功の可能性を高めることができます。
この他にも離れた場所で業務を行うため、仕事に対する評価の方法の変更、労災補償の範囲の確認なども改めて行うことで従業員の不満やトラブルの回避に繋がります。
ワーケーションにはまだまだ可能性がある
現時点ではそれほど流行ってるとは言えないワーケーション。とはいえ、ワーケーションが可能なリゾート施設なども増えています。また、テレワークの普及に併せて、チャットツールなどの導入のハードルが下がっています。そのため、ワーケーションにはまだまだ多くの可能性があると言えるでしょう。
ワーケーションが失敗しやすい理由、そして成功させるにはどうすればいいのかを改めてしっかり考えた上で、導入を検討してみてはいかがでしょうか。