「旅をしながら働く」「場所に縛られず働く」「旅するように働く」などさまざまな形があるトラベルワーク。
当メディアでは、そのようにさまざまな形で仕事に向き合う人の働き方にフィーチャーしていきます。
今回は、Webライターとして活動するadacharuさんのルーティンや仕事へのやりがいなどについてお話しいただきました。
プロフィール
adacharu
Webライター。管理栄養士の資格を活かして栄養やグルメ、ライフスタイルを中心に幅広いジャンルを執筆。
作品・活動への想い
記事を書くときは、納得いくまでやりきることを心がけています。仕事をする上でスピード感が大切なのはわかっていますが、それが難しいなら焦らず確実にやり切るしかありません。
というのも、私は物心ついたときから、何をしても周りより時間がかかってしまう人間でした。社会的に見たら欠点なのかもしれませんが、肌の色とか身長などと同じように、「生まれもった性質なのだ」といい意味で諦めて対策していくことが大切だと思っています。
スピードで勝負できない分、とことんやり尽くして満足のいく状態で提出することを意識しています。
また、ご依頼いただいた仕事は基本的に断りません。やったことがないジャンルでも「未経験ですがやらせてください」というスタンスで挑んでいます。
一度やってみて難しければお断りしますが、せっかく声がかかったなら、自分の可能性を広げるチャンスだと思って楽しんでいます。
活動をはじめたきっかけ・理由
Webライターをはじめたきっかけは、コロナの影響で失業したことです。失業中は「自分は社会から必要とされていない」という思考に陥り、ほぼ引きこもり状態。気分はすごく落ち込みましたが「働くとはなにか?お金とは?生きるとは?」を考えるいい機会になりました。いろいろと考えてみた結果、私が生きる上で優先したいことは「自由」と「旅行」でした。
20代前半で仕事をやめてバックパッカーをしたとき、貧しい国で楽しそうに暮らしている人たちを見て純粋にいいなと思ったんです。生きていくうえでお金は大切だけど、お金を使わずに楽しむ方法はいくらでもある。1日1,000円で生活した貧乏旅行は、私にとって濃密で贅沢な時間でした。休みなく毎日働いて金がいっぱい貯まるよりも、好きな場所で楽しく仕事をする方が幸せだという考えに至りました。
失業保険が切れるころ、「そろそろ動き始めないと」となんとなくクラウドソーシングに登録。旅をしながらできる仕事を探したところ、Webライターにたどり着きました。
正直文章が得意だと思ったことは一度もありません。しかし、昔から読書が好きで、気になったことはとことん調べないと気が済まない性格だったので「これならできるかも」とチャレンジしてみました。ネガティブなスタートだったかもしれませんが、今では楽しく仕事をしています。
本業・前職
新卒で給食会社に就職し、介護老人保健施設で1年、保育園で2年間栄養士をしていました。働きながら管理栄養士の資格を取得して退職。お年寄りや介護士さん、保育士さんと食事やアレルギーについて話す際、できるだけ難しい専門用語を使わずに伝えることを意識していました。その経験がWebライターの仕事に活きている気がします。
栄養士を辞めたあとは、1年半ほどバックパッカーをしながらベトナム料理店のキッチンで働いていました。その後は派遣で繊維の品質管理や食品会社の研究開発などを経験。
コロナ失業を機にWebライターを始め、現在はフリーランスとして活動しています。未経験でスタートしたため、初めての案件の文字単価は1文字0.1円でした。そこから、0.5円、0.7円、1円と徐々にステップアップしていき、1年ほどで一定の収入を確保できるようになりました。
はじめは修正依頼が多くて落ち込んでいましたが、頂いたフィードバックをすべてメモして提出前にチェックするようになってから、安定してお仕事を貰えるようになった気がします。
仕事、生活、休暇のバランス
平日・作業をする日のルーティン
固定の休日はあまり決めていません。作業をする日は朝9時ぐらいに起きて午前中はコワーキングスペースで仕事。以前は家で仕事をしていましたが、出かける習慣がないとダラダラしてしまいそうだったので、平日午前に利用できるプランを契約して、強制的に外に出るようにしています。
帰宅して昼食と昼寝を挟んだら夕方まで仕事。17時ごろに実家に行って母と一緒にヨガをしています。母の運動不足を解消するためにはじめましたが、今では仕事のリフレッシュになっています。
帰って夕食とお風呂を済ませたら自由時間。YouTubeを観たり読書をしたり、ぼーっとしたりして過ごしています。昼間にうまく執筆が進まなかったときは、深夜まで作業をすることも。
今後の課題は毎日決まった時間に寝て、仕事の時間もしっかり区切ること。フリーランスは就業時間が決まっていないので、自分でしっかりメリハリをつけないといつまでもパソコンの前に座ってしまいます。作業効率をアップするためにも、少しずつ改善していきたいと考えています。
休みの日の過ごし方
日曜日は10年ほど続けているドラムのレッスンに通っています。とはいっても週に1回1時間叩くだけなのでまったくうまくはないのですが……。ドラムを始めたきっかけは、休日を充実させるためでした。というのも社会人1年目のときに休みが月6日ぐらいしかなく、疲れ果てて休みの日は1日寝てばかり。せっかくの休日を無駄にしないために習い事を探すことにしました。
高校生のときに軽音楽部でベースをしていて、違う楽器にも挑戦してみたいと思いドラムを選びました。ドラムを叩いている間は、他のことを一切考えずに没頭しています。完全にゾーンに入っている感覚で、脳のリフレッシュになっている気がします。
ドラムは、はじめは全くできなかった曲もスピードを落として少しずつ練習していると、絶対に叩けるようになるんです。同じように文章を書くことも諦めずに続けていけば、いつかできるようになるはず。ドラムで得た忍耐力や達成感が仕事にいい影響を与えてくれていると思います。
時間があるときは、旅行やソロキャンプに行くことも。キャンプではスマホを一切触らず、コーヒーを飲みながらぼーっとしたり、ごはんを焦がして焦ったり、焚火の煙に涙したりしながら楽しんでいます。デジタルから離れて頭を空っぽにすることで、次の日から新たな気持ちで仕事に取り組めます。
創作/作業に欠かせない道具や場所、ツールなどについてのこだわり
主な仕事場所は自宅とコワーキングスペースです。「開放的な場所で仕事をすると集中力が切れて生産性も低下する」「オフィスに観葉植物置くことで生産性が上昇する」というという記事を読んだので、コワーキングスペースは緑が多くてパーテーションがあるところを条件に探しました。外付けのキーボードは「iClever」、スタンドは「ElfAnt」というメーカーのものです。少しでも快適に作業ができるようにパソコン周りのグッズを揃えています。
少しでも仕事に集中しやすい環境を作るために、自宅のデスクにはドライフラワーと観葉植物、ハーバリウムを置いています。「集中力を高める方法」「効率よく仕事をする方法」などを見聞きしたら、とりあえず試してみたくなるんです。集中力が切れたときは散歩をしたり、お茶を飲んだり、筋トレをしたりして、一旦パソコンから逃げて気持ちを切り替えています。
”好きなこと”と”仕事”について。やりがいは?
正直文章を書くのが好きでWebライターになったわけではありませんが、いまは楽しく仕事に取り組んでいます。私は”好きなこと”と”仕事”は距離を置いた方がいいタイプなのかもしれません。
栄養士をしていたときは、現場の忙しさと命を預かるプレッシャーにやられて、まったく仕事を楽しめていませんでした。
だから、もし文章を書くのが好きだったらWebライターにはなっていなかったかもしれません。好きだからこそ「自由に書きたい!」と思ってしまいそうな気がします。Webライターとして食と関わっているぐらいの距離感がちょうどよくて、今の仕事が一番楽しいです。
正直Webライターでの報酬は、栄養士時代や派遣時代の半分ほどですが、「もうちょっとがんばったら稼げるようになるかも」とワクワクしながら執筆をしています。生活は厳しいですが自分の力で稼いでいる感覚があってとても充実しています。
フリーランスになることにはもちろん恐怖心もありました。しかし、「失敗しても死ぬわけじゃないし、とりあえずやってみよう」というチャレンジ精神を大切にしています。
そんな気持ちでスタートしたWebライターでしたが、周りと比べて稼げていないという焦りから、一度に大量の案件を受注してしまったことがあります。その結果キャパオーバーになってクライアントさんに迷惑をかけてしまいました。
収入を増やしたい気持ちはありますが、いまはあまり無理をせず目の前の案件に向き合うようにしています。自分のキャパを把握して、記事の本数を減らしてもらったり、納期を伸ばしてもらったりして調整しています。
強みや価値はどこにあるか?
栄養に関する知識を持っていることが強みだと感じています。Webライターをはじめて驚いたのが、間違ったダイエット法や根拠のない健康法などを紹介している記事が多いこと。
もちろん、コロナのワクチンについて専門家の間でも賛否両論が分かれたように、いろいろな意見があって当然なのですが……。
私が記事を書くことで、「読んでくれている方が少しでも健康になればいいな」と想いながら仕事をしています。一つ強いジャンルを持っていると執筆していても楽しいですし、仕事を振ってもらいやすくなると考えています。これからも新しい知識をインプットして、管理栄養士としてもライターとしてもレベルアップしていきたいです。
企業と仕事をするにあたり、大変なことややりがい
複数のクライアントさんや企業さんとお仕事をするとなると、記事の内容やメディアの性質で求められる文章が異なります。同じような文章を書いたとして、A社からは褒めてもらえて、B社からは修正依頼いただくなんてことも少なくありません。そこが文章を書く仕事の難しいところでもおもしろいところでもあると感じています。
Webライターをはじめて2年目ですが、自分の文章力にはあまり自信がありません。文章が書けずパソコンの前で固まってしまうことも日常茶飯事。書けなくなったときは、ライティングの本を読んだり、好きなライターさんの記事を写経したり、図書館に行って本からリサーチしたりしながら、なんとか記事を完成させています。
そんな中、指名でお仕事の依頼があったときは、非常にやりがいを感じます。「期待に応えられるかな」というプレッシャーもありますが、「この人に依頼してよかったな」と思ってもらえるようにがんばろうと気合が入ります。
今後の活動について
これからも、Webライターを続けていくつもりです。ライターという仕事を通して、幅広い知識を増やしていけたらうれしいです。長い道のりですが、最終的な目標は機内誌のライターになること。
両親が大の飛行機好きで、実家には機内誌のバックナンバーが大量に置いてあります。機内誌の文章は単なる観光地のPRではなく、その国や地域の文化や生活が滲み出ていて、読んでいてすごくワクワクするんです。いつか私もそんな文章を書けるように、まずはSNSやブログなどで旅の情報を発信していきたいです。いまは芸人さんの下積み時代のようなものだと自分に言い聞かせて、少しずつ成長していけたらなと思っています。