時代に合わせた社内規則をつくることは、今を生き抜く会社組織に課せられた義務と言えます。「リモート出社は当たり前!」「家賃だけでいいの?勉強代も出すよ?」「子供が生まれたらお父さんもお母さんも休んでね!なんならベビーシッターもつけようか?」と、働く側が甘やかされすぎているような気もします(とてもいい時代だと思います)。
旧態依然とした会社のルールはそれはそれで味があるのでは?と思ってしまうこともあるのですが、世間の流れに従うのなら、より自由になるためにより責任が個々に向いていくルールが必要なのでしょう。
さて、突然ですが、今回はそんな「働き方」をアップデートすることを会社の使命に掲げている弊社「アステル」が実際にトラベルワーク制度を社内で正式導入するまでの流れをご紹介します。
新しい仕組みを会社に導入したいけど、どのように企画を立てれば良いかわからない方、どのように上司を説得すれば良いかわからない方、この記事が何かヒントになればと思います。
新たに導入したい社内制度の要件をまとめよう
新たな社内ルールをつくるなら、「要件」が必要になります。たとえ、どんなに小さな組織でも、ルールを作成するなら相手を説得できる「資料」を用意しましょう。今回はまず以下のように最初の段階で要件をまとめました。
※前提として弊社では「トラベルワーク」をこのように定義づけています。ご参照ください。
トラベルワーク制度草案
社内制度のブラッシュアップ方法
上記のように草案を作った後に、より実現角度を上げるために今回は次のような作業を行いました。気軽に相談できる社労士さんなどがいるとより精度を上げることも出来そうですが、今回は社内でなるべく簡単に完結できる方法で進めていきます。
とここで調べていて気づいたんですが、通常、この”社内提案”にはもうひとつ前段階があるようです。
それは、”社内提案ができる空気づくりをする”というフェーズ。
規模が大きくなればなるほど、この課題は大きな問題となるので、言いたいことをみんなが言える環境作りも重要ですよね。多くの書籍や記事がこの空気作りに言及していますが、こちらまたの機会に。今回は、社内制度がスムーズに提案できる環境が整っているという前提で下記のように進めて行きます。
他社の社内制度を確認しよう
ブラッシュアップには他社の社内制度を研究することが一番有効なインプット方法でしょう。「リモートワーク 社内制度」「働き方 社内制度 公開」等の検索ワードを活用しても良いですし、ニュースリリースを出している企業も多いので、参考にしてみてください。今回は5社、参考になりそうな企業の取り組みをピックアップしてみました。
①ヤフー株式会社「どこでもオフィス」
ヤフー株式会社はコロナ以降、以前にも増してこの働き方の多様化に向けてトライ&エラーを繰り返しています。中でも、概要内の「(1)リモートワーク(※2)の回数制限を解除(※3)」「(2)フレックスタイム勤務のコアタイムを廃止(※3)」「(4)通勤定期券代の支給停止(通勤交通費は実費支給)」という3点は今回の弊社の取り組みにも重なる部分が多く、注意事項まで含めて非常に参考になります。
特に概要のこの部分、『※2:働く場所は自宅の他にも個人の創造性が発揮される場所とし、制限は設けません』。弊社におけるトラベルワークの概念と共通する部分が多く、素晴らしいと思う一方で、現場のことを考えると『※3:(1)(2)については、担当業務により一部社員が対象外となります』の部分がどのように運用されているかがとても大事な部分だなと感じます。
②ワヴデザイン株式会社「30日連続休暇制度」
いい社内制度ですね。キャッチーでわかりやすくて、素晴らしいです。期間を限定しているため、弊社の取り組みとは方向性が違いますが、自由な働き方という意味では先進的な取り組みをしているのが「ワヴデザイン株式会社」です。1ヶ月の休暇をまとめてとるということは、すなわち、案件をその期間担当しないということ。デザイン会社であれば納期を調整し、プロジェクトが何もないタイミングを狙うことで実現が可能なのかもしれません。ただ社員26名、業務委託10名(2022年3月現在)とのことなので、引き継ぎの際の労力や、復帰の際にどう業務をキャッチアップするのかといった課題がありそうです。現実的には全くのお休みというよりは、アイドリングストップしておき、常にメールや電話のやり取りは発生しているようなイメージでしょうか。
③「どに〜ちょ」&「イエーイ」
こちらは名刺管理でおなじみの「Sansan株式会社」から2つほど、参考になる制度をピックアップしてきました。どちらも相当にキャッチーなネーミングなところにこだわりを感じます。ヤフー株式会社とは違い、例外的な対応を取るのではなく、ある程度レギュレーションを設けて、その中で「自由」に働き方をカスタマイズする方法です。こちらの方が総務的な立場から考えると、業務オペレーションとしてはやりやすいと言えそうです。1日単位の申請であれば、会社側も従業員の稼働を把握できますし、休日と平日を入れ替えるというシステムも自由な働き方を体系的に落とし込む際には非常に有効だと感じました。
ただ、当然これを管理するシステムが常にアクティブであることが重要なため、システム自体が形骸化してしまう可能性も大いにありそうです。
④SOFTBANK「サテライトオフィス」
株式会社SOFTBANKほどの規模感であれば、規則だけで括るという話ではなく、箱をたくさん作って、その箱の中で自由に働いてもらうという手段も可能。こうすることで、”社員の自由”と”会社側の管理”という2つの要素を融合し、折り合いをつけることに成功しているように思えます。
この手法は、小さな規模の会社では自前のオフィスを複数用意するという点で現実的ではないため、そのまま流用は難しいでしょう。
⑤SmartHR「テレワークに関わる補助金」
株式会社SmartHRは、とても現実的な落とし所を、1年間の暫定規則の期間内の経験を元に公表してくれています。グループ(職種)によっての制度分けは弊社でも検討の余地がありそうです。
また、コアタイムとフレックスタイムの考え方においても、非常に参考になりました。コアタイム無し、フレックスタイムを6:00〜22:00とするというのは弊社においても導入が望ましいのではないかと考えます。
また、ワーケーションに関しては、社内での承認制を設けてはいるものの、かなり自由なルールであることが印象的です。ワーケーションを”国内のみ”としている点は弊社では改善の余地がありそうですが、多くの部分で参考になります。
社内制度の要件を見直そう
他社事例を参考にしながら、再度要件を見直していきましょう。
今回、見直しの際のポイントとなったのは、以下の点です。
■定着しやすいキャッチーな名前であること
■運用までのイメージがしやすい現実的な規則であること
■例外を認めつつ、業務に必要なコミュニケーションを維持できること
導入背景と目的の見直し
①導入背景と目的
「働き方をアップデートする会社」として、新しい仕事のスタイルを素早く積極的に取り入れ、検証し、ブラッシュアップしていくべき。「働く時間と場所に囚われない生き方」をアステル社員が体現していくことで、新しい仕事の形「トラベルワーク」をより多くの人に認知してもらいたい。
↓
①導入背景と目的
「働き方をアップデートする会社」として、新しい仕事のスタイルを素早く積極的に取り入れ、検証し、より現実的に実行可能で生産性の高いものにブラッシュアップしていくべき。「働く時間と場所に囚われない生き方」をアステル社員が体現していくことで、新しい仕事の形「トラベルワーク」をより多くの人に認知してもらうことを目的とする。
期待する効果の見直し
②期待する効果
・楽しい、ストレス軽減
・社員がトラベルワークを実践することで、会社の目指すべき方向を自身の体験を元に見直すことができる
・社内メディアのコンテンツ増加
・自社ツール(travelworker)へのフィードバック増加
↓
②期待する効果
・それぞれが働きやすい環境をカスタマイズすることができるようになる
・自由度を上げることによる、生産性向上とストレス軽減
・社員がトラベルワークを実践することで、会社の目指すべき方向を自身の体験を元に見直すことができる
・社内メディアのコンテンツ増加
・自社ツール(travelworker)への精度の高いフィードバックが実現できる
概要と予算の見直し
③トラベルワーク制度概要
・月に何度でも何日でも国内外問わず、好きな場所で働いて良いという前提がある上で
・月に50,000円までは経費精算可能
※使用しなかった場合、翌月以降に持ち越せるのは10,000円、1円でも使用した場合は持ち越し不可。
※1月に使用しなかった場合、2月に60,000円使用可能、繰り越せるのは最大で10,000円まで
・入社後半年の間は半額、繰越不可
・10,000円使う毎に記事を1本執筆する
※50,000円使ったら5本執筆
↓
③トラベルワーク制度概要
<社内規定(コアタイム)>
月・水・金曜日の12:00~17:00をコアタイムとし、下記いずれかのオフィスでの勤務。
(渋谷本社/埼玉支社/広島支社/その他契約ワークスペース)
※海外滞在中は個別相談
or
コアタイム制度無し
<社内規定(フレックスタイム)>
6:00〜22:00までの間でのフレックスタイム制度とする。
<トラベルワーク制度>
・オフィス、自宅以外で勤務する場合には、社長の承認を受ければOK
・申請単位は1ヶ月毎
※申請後のイレギュラーな対応は個別に出社管理ライングループで連絡
・月に最大30,000円まではトラベルワークに関わる経費を精算可能
※経費に該当するもの:交通費、宿泊費、場所代、飲食代など
※使用しなかった場合は持ち越し不可。
・10,000円使う毎にトラベルワーク記事を1本執筆
社長からのフィードバック
以下、訂正したものを提出して、戻ってきたフィードバックです。
社員からのフィードバック
上記の社長の意見を元に、メンバーにもフィードバックを求めました。
以下、戻ってきたフィードバックです。
トラベルワーク制度完成、導入へ
上記のフィードバックを元に、社内からの意見などを吸収して最終的には下記のような形で運用がスタートされることとなりました。社内制度は常に見直しが必要なため、事前に1年毎の見直しを行う旨なども定めておけると良いでしょう。ぜひ自分の理想とする「働き方」を実現するために社内制度の策定を行ってみてください。