神保町といえば、純喫茶、カレー、スポーツショップ……さまざまなお店が連想されますが、真っ先に「古本」が浮かぶ方も多いのではないでしょうか。世界最大級の本の街と謳われる神保町にはおよそ200店もの古本屋が建ち並んでいます。
今回コワーキングスペースとして利用させていただいたのは、神保町駅を出てすぐ、靖国通り沿いに面している「神保町ブックセンター」さん。1日利用をし、運営会社の方にコンセプトや込められた想いについてお話を伺いました。
午前11時 ラウンジで仕事開始
入ってすぐ右手にある受付で「ラウンジ1日利用」の旨を伝え、コーヒーや紅茶の中からワンドリンクを選びます。「すぐお持ちするので、お席でお待ちください。」とのこと。
カウンター席と本棚の間をゆっくり歩き、ズラリと並んだ本を眺めながらラウンジへ向かいます。利用料金は以下の通り。
<LOUNGE SPACE>
月額会員 1ヵ月 20,000円(税抜) | 1日利用 1,800円(税抜) | 学生割 1,000円(税抜) ※対象は高校生以上 |
---|---|---|
<設備> ・電源/Wi-Fi 完備 ・複合機/文房具利用可 <オプション> ・登記利用可(ポスト付) ・ロッカー利用可 <その他> ・会議室利用割引あり ・イベント割引参加可 ・カフェ利用30%OFF | ・電源/Wi-Fi 完備 ・複合機/文房具利用可 【平日】9:00~19:00 ※感染症の影響で1時間短縮して営業中 ワンドリンク付き 【休日】10:00~19:00 フリードリンク ※学生割をご利用のお客様は受付時に学生証をご提示ください。 |
※最新情報は公式ページでご確認ください
ラウンジは半透明の白いカーテンで区切られています。ここをくぐるとカウンター席やテーブル席が広がっており、会話や食器の音がするカフェスペースとはまた違った空気感となっていました。
平日の11時ごろに訪れたところ、3~4名の方がパソコンに向かって作業をしていました。「ミーティング禁止」といった明確なルールはないものの、全員が周りへの気遣いを常にしていたのが印象的です。
カウンター席には1席あたりコンセントが2つ。隣の席との仕切りも設置されているため、集中して作業できそうです。
席についてすぐ、ホットコーヒーが運ばれてきました。緑色のカードは受付時に渡されたもので、中にはWi-Fiのパスワードが書かれています。
無音でもなく騒がしくもない、心地よい空間で、普段はイヤホンで音楽を聴きながら作業するのですが、ここではその場所の音を楽しみながら集中することができました。
お昼はカフェスペースでカレーを
12時過ぎ、お腹が空いてきたのでカフェスペースへと移動します。一人で本を読む方、友人と食事を楽しむ方、コーヒーを飲みながらくつろぐ方、それぞれが自分の時間を満喫しているようでした。
カフェスペースのレイアウト等について企画・設計・運営を手がけるUDS株式会社のローカルレストラン事業部 永礼欣也さんにお話を伺ったところ、
「家具のトーンを揃えるだけでなく、ソファは本に集中できるよう深めに作っているなどさまざまな箇所にこだわっています」
とのこと。“こだわっている”と言われなければ気付けないほど馴染んでおり、この空間の心地よさの理由が少し分かった気がしました。
メニュー表には岩波文庫の表紙デザインが施されていました。これから新しい小説を読む時のようなワクワク感があります。
以下のように時間帯で分けられており、8ページにもわたって書かれているメニューの種類はとても豊富でした。
・Morning(9:00~11:00)
・Lunch(11:00~15:00)
・Cafe food(9:00~last)
・Drink(9:00~last)
・Dessert(9:00~last)
迷った結果「ホロホロ和牛カレー 1,000円」を注文。サラダやスープ、ランチドリンクもセットになっており、すっかり満腹に。
お会計を一度済ませてからラウンジへと戻ります。カフェスペースとラウンジで物理的に場所が分かれていることから、仕事へ戻る際の切り替えもしやすかったように感じました。
ふと壁を見上げると、神保町ブックセンターの楽しみ方といった文字とイラストが。
「こう楽しむべきだ」と決めつけられることがなく、自分にあった楽しみ方を見つけられる余白が残されているのは嬉しいですよね。
神保町ブックセンターに込められた想い
最後に、永礼さんに神保町ブックセンターについてお話を伺いました。
ーコンセプトについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
「未来の自分の種をまく」です。神保町ブックセンターでは岩波書店の本を揃えているのですが、知的好奇心をくすぐる本が多くあります。そういった本をきっかけに、新しい知識や新しい自分、新しい仲間と出会うことにつながる。本と人との交流拠点となり、きっかけを提供することを目指しています。
ーラウンジはどういう方が利用することが多いのでしょうか。
月額の会員様は出版関係の方や翻訳家、漫画家などの方が多いですね。1日利用だと出版社の方が多いと思います。
そして、コロナ禍で学生の利用も増えました。休日はフリードリンクであることも関係して、週末は満席のこともあります。
ー現在利用している方に加えて、もっとこういう人にも訪れてほしいなどはありますか。
サラリーマンが来てランチをしたり、近所の人が打ち合わせをしに来たり、学生が学校帰りに来たり……普段から幅広い年代の方に訪れていただいていますが、残していきたいものの一つとして「100年以上続いてきた神保町の文化」があります。
「買ってみよう」「読んでみよう」そういったきっかけとなる場所でありたいですし、本の文化を残していきながらアップデートしていきたいと考えています。なので、もっと若い方に来ていただいて神保町ブックセンターで生まれたものが世に出て行ってくれたら嬉しいですね。
本に囲まれながらコーヒーを楽しむ。本が好きな方と同じ空間で仕事をする。ふと気になった本を手に取ってみる。在宅ワークが続いてどこか退屈に感じている方は、新しい自分と出会うきっかけを探しに訪れてみるのも良いかもしれません。