みなさんは、SNSの投稿をしていますか?その日あった出来事をアップしたり、何かについての想いをつぶやいたりと、きっといろんな使い方をしていますよね。筆者はライターという職業柄、テキストを打ち始めるとつい仕事モードになってしまうことが苦痛で、SNSは見る専門です。
そんなSNSの投稿とは距離を置いている筆者が、つながらない投稿アプリ、書く瞑想アプリ「 muute(ミュート)」を無料で使ってみることにしました。初めての投稿から10日もすると「投稿をどう思われるか」から解放され、自由で不思議な感覚を得られたのです。ぜひそのプロセスを覗いてみてください。
無料アプリ「muute(ミュート)」とは
muuteのWebサイトを開くと、柔らかなピンクの背景にmuuteのブランドロゴが目に飛び込んできます。ブランド名のmuuteはミュート(mute/消音)のことで、オーディオなどの消音機能を語源にしているのでしょう。一般的なSNSアプリとは違って、投稿者は自分だけで誰ともつながらないという特徴をよく表したネーミングだと感じます。さらに「知らない自分を見つけよう」の文字も気になります。一体どんな意味が込められているのでしょうか。
思いつくままを投稿できる
「投稿」と聞くと、誰かに見られている感覚がありますよね。公開範囲の設定にもよりますが、投稿の先には、家族や友人、ビジネスを通じた知り合いや、顔も知らない人々など、さまざまな相手が存在します。いわゆる「友だち」や「フォロワー」が増えるほど、自分の世界が広がるようで嬉しい気持ちになるものです。
一方、「あの人はどう思うだろう」と気になりすぎたり、仕事の関係者にも見られていると思うと書ける内容が限られたりと、SNSの投稿はマナーやコンプライアンスに縛られがちです。場合によっては批判、炎上に巻き込まれることもあります。
そんな背景から、muuteの「つながらない投稿」が注目を浴びているそうです。
muuteの投稿者は自分だけ、そしてリアクションはAIだけが行います。誰にも気を使わずに、どう見られるかも意識せずに、感じたことをありのままに書いてOKなのです。
「ジャーナリング」という自分との向き合い方
「ジャーナリング」という一般的にはあまり聞かない言葉も、muuteのキーワードです。
ジャーナリングとは、頭に思いつくままにひたすら言葉を書き出す行為を指します。無心に書き出すことに心を集中させることから「書く瞑想」とも呼ばれています。今のこの瞬間を大切にして心身を整えていく「マインドフルネス」の一環としても取り入れられている方法です。
誰に見せるでもなく思いのままに書き出していくことで、まず「言葉にならない想いを吐き出す」という効果がありそうですね。そして、投稿を後から見返すと「こんな風に思ってたんだ」と自分を客観視できそうな気もしてきました。
リアクションは「AI」がしてくれる
muuteは投稿を一切公開しないことが大前提とはいえ、たった一人ぼっちで言葉を綴るのであれば日記やメモと変わりません。muuteのもう一つのポイントは、実在の人物ではなく「AI」がリアクションしてくれることです。心のモヤモヤや自惚れなど、誰かが見ているSNSでは言いにくいことを、AI相手なら気兼ねなく投稿できそうです。そして、投稿内容をAIが分析して「最近のあなたはこうですね」と語りかけてくれるそうです。
これが、「知らない自分を見つける」という意味なのかもしれません。
【10日間体験】「muute(ミュート)」の使い方
ここでは、筆者が実際にスマートフォンでアプリをダウンロードするところから10日間使ってみた様子をご紹介します。体験を通じて、muuteでできることを解説していきます。
1.アプリをダウンロード
まずはストアからアプリをダウンロードします。
アプリの推奨環境はiOSバージョン14.0以上とAndroid8.0以上となっていて、インターネットがつながったスマートフォンからならいつでも操作できます。しかしiPadでは一部機能が非対応になっているほか、PC版やWeb版の提供はありません。2021年11月時点では全ての機能が無料で使用できます。
2.アカウントを登録
次に、メールアドレスとパスワードを準備してアカウント登録へと進みましょう。 Apple IDとGoogleアカウントでも登録は可能です。
3.初めての投稿
登録が済むと「まずは50文字、思いついたことを書いてジャーナリングを体験してみましょう」と投稿を促されます。
投稿の方法は下記の3種類あります。
・テキストから投稿する
・感情選択から投稿する
・質問に答える
「テキストから投稿する」を押すと、自由形式のメモ画面が開きます。ここで思いつく言葉を無理なく書けるといいのですが、日頃自分の想いを書く習慣がないに人は難しいですよね。
加えて「感情選択」から投稿することもできます。「満足」「ワクワク」といったポジティブな感情や「悲しい」「後悔」といったネガティブな感情の中から当てはまるものを選んで、「この感情はどこから来ているか」を文字にするという手順です。すでに用意されている感情に当てはまるものがない場合は、自分で追加することもできます。
それでも投稿することが浮かばないというときは「質問に答える」を選びましょう。muuteが唐突に投げてくる質問に素直に答えることで、潜在的な想いが浮かび上がるような気がします。
投稿の後は、muuteからのメッセージと偉人の名言が表れます。筆者の初めての投稿には、日本の漫画史の黎明期を切り拓いた手塚治虫氏の言葉をもらいました。
muuteでは、世界の歴史上の人物の名言から日本の漫画の登場人物のセリフまで、さまざまなジャンルの言葉を投げかけてくれます。きっと書き込んだ文章に対してフィットしそうな言葉をAIが選んでくれているのでしょう。なんだか素直に受け止められる気がしました。
4.初めてのAIからの手紙[Welcome letter]
初めての投稿の翌日には、muuteからWelcome letterが届きました。
内容を読むと、前日の複数の投稿からAIが分析をしてくれたことがわかります。語りかけるような文章で、まるで誰かが寄り添ってくれる感覚を受けました。
また、「感情と思考」「感じていること」なども一目でわかるように紐解いてくれます。夜ご飯のことをつぶやいたからでしょうか、食事のことばかり考えているような結果となりました。
5.週1回のレポート[Weekly Insight]
毎週日曜日には、週1回のレポートも届きます。筆者は土曜日に投稿をスタートしたので、翌日曜日には初回の[Weekly Insight]を受け取ることができました。
どんな言葉をよく使っていたかを一画面で見せてくれたり、投稿の中からポジティブ度が最も高いものと低いものを対比してくれたりするので、「こんなこと書いてたっけ」と自分を一歩引いた目線で認識することができました。
さらに、9日目となる2回目の日曜日にはさらに充実したレポートが届きました。
一週間のうちの投稿日や時間帯も一目でわかるようになっていました。加えて、感情のバイオリズムが可視化されている点も興味深いところでした。
この週は水・木曜日に投稿をしなかったからか、「投稿をお待ちしています」「せっかくですから」「トライしてみましょう」などと、毎日の投稿を優しく後押しするような文章が綴られていますね。強要されるでもなく、投稿を応援されているような気がしました。
【感想】ありのままの自分と出会える「muute(ミュート)」
最後に、10日間使ってみた感想を3つの項目にまとめてみました。
ひとりごとに返事をもらえる自由な空間
muuteは、子供の頃からスマートフォンが身近な場所にあった「Z世代」のために開発されたそうです。彼らの多くは当然のようにSNSで他者とつながり、「自分らしくあること」を求められて育ちました。逆説的には「自分らしさ」に思い悩みやすい世代とも言えます。誰と比較するでもない自分とAIだけの空間は、きっとZ世代にとって心地よいものでしょう。誰のことも気にせず言いたい放題、ネガティブなことを綴ってもリアクションしてくれる。そんな場所って、意外とないのかもと思いました。
筆者はそのZ世代ではありません。もっと言えば、ミレニアム世代でもありません。それでもmuuteの「つながらない」「リアクションはAIだけ」はとても気楽で、続けられそうだと感じています。
話し言葉で書き込む身軽さ
筆者はライターという職業柄、テキストを打ち始めるとつい文章を整えてしまうクセがあります。そのせいでSNSの投稿から距離を置いていました。muuteをはじめるにあったって、せっかく自分と向き合ってジャーナリングするのだからと、日頃の話し言葉を文法も気にせず書き込むようにしました。
筆者は関西弁を使っているので、「AIにも関西弁わかるんかなぁ…」と思いながら投稿を続けました。AIからのレポートには誤った解釈などは見られなかったので、このままの関西弁の言葉遣いで筆者の場合は問題なさそうです。それも気軽さの理由になっています。
視覚的にも癒されるデザイン
muuteのインターフェイスの特徴は、浮遊感のある癒しデザインです。正円ではなく手書きのような曲線のオブジェクトやペールトーンの柔らかい背景色、そして緩やかなグラデーションは透明感があって、まるで感情の揺らぎを表現しているようで心地いいですね。ジャーナリングの行為だけでなく、視覚的にも癒されるように感じました。
今後も使いたい「muute(ミュート)」
筆者は子供の頃から日記が習慣にできず、夏休みの絵日記もまとめて書くようなタイプでした。しかしmuuteをはじめてみてみると、すきま時間に「ちょっと書こう」という気持ちが自然と湧いてきました。1回投稿すると、その内容にどことなく触れたような名言を教えてくれるので、名言見たさに投稿することもありました。
なんの気ないひとりごとや、モヤモヤを吐露する悩み告白、ちょっとした思いつきのメモなど、何を綴っても構わない。「どう思われるのか」に縛られない不思議なmuute空間をこれからも楽しんでみようと思います。