コロナ禍に突然会社からリモートワークを言い渡されて戸惑った人も多いと思います。働き方が変わるとともに、かつての常識が通用しなくなったり、首をかしげたくなるような新たなビジネスマナーを会社から指示されたりといったことがあると聞きます。今回は、在宅ワーカーとして働く筆者の視点から「それ必要?」というような謎マナーと、リモートワーク下で役立つ新ビジネスマナーの主なポイントを挙げてみました。
それって誰トク? 謎マナーには要注意
リモートワークが浸透する中「誰が気にするの?」「何のため?」と言いたくなるような新しいビジネスマナーが生まれているようです。とくにビジネスチャットやWeb会議などの、組織として新しく導入した仕組みについてのことに多いように感じます。もはや「謎マナー」とも呼びたくなるような事例をいくつかご紹介します。
Web会議は上司より先に退出しない
Web会議やビデオ通話中に「どうして君は上司よりも後に画面にうつるんだ」と怒鳴られた方はいませんか?アクセスをオフにするのもエラい人が画面から消えてからといったような、上司ファーストのルールが守られている会社があるようです。
名前や映像の表示は役職順
もう一つの上司ファーストは、「エラい人順に名前や映像を表示」というのもあるようです。
そう指示してきた上司に「このソフトをどう使うか教えなさい」なんて言われてしまうと、「順序よりもツールの使いこなしをお願いします!」と返したくなりそうですね。
常時監視で社員を見張る
リモートワークはサボり放題と思う人がいまだにいるようです。常にWebカメラを接続させたり、30分おきに報告させたりと、部下がマジメにやっているかに執着して目を光らせる上司がいるとか。
現実のリモートワークは、離れた仲間やクライアントと意思疎通をはかりながら仕上げなくてはならないので、おいそれとサボれるものではありません。評価基準は「サボっているかどうか」ではなく、「きちんと成果が上がっているか」であるべきです。
いつなんどきもスーツ・ネクタイ着用
「リモートでカメラにうつるときはスーツ・ネクタイ着用」と会社から決められていませんか? カメラの先にいるのが重要な商談相手ならばまだしも、部署内の朝礼時にもスーツ&ネクタイとは、理不尽さしか感じません。これについても「結果を出しているかに目を向けてくださいよ」と言いたくなります。
謎マナーを生んだのは「美しい?」日本のビジネスマナー
なぜ、こんな謎マナーが広まってしまうか、その理由にも目を向けた方が良さそうです。
日本のビジネスシーンでは、敬語や敬称などの美しいビジネスマナーがあります。それにタクシーやエレベーターでのポジショニングにまで「上座・下座」が決まっていたり、「結果より過程が大事」という精神論が重視されたりという独特な価値観もありますよね。
昨今多くの企業が一斉にリモートワークを導入し、旧来のビジネスマナーを無理やりルールに取り込もうとした結果、謎マナーが生まれたと考えられそうですね。
しかしそもそも日本の古いビジネスマナーが世界の価値観と違いすぎて、グローバルへの順応に時間がかかるといった課題が語られることもあります。令和時代のリモートワークにどこまで取り入れるべきか、その真贋を見極めるチャンスかもしれません。
生産性の視点で必要性をみつめる
そのマナーは本当に必要で、守らないと生産性に響くのか。自分が上役の立場なら、謎ルールからの解放を促して、リモート環境の風通しをよくしていきたいところです。
ただし、礼を欠く振る舞いは結果として損
すべてを謎マナーとして切り捨てるのは簡単です。しかし「それって古いですよ」と頑なになってしまうと「これだから若い世代は……」「逆に融通が利かない人だな」と、かえって仕事上の評価を下げてしまいかねません。
リアルに顔合わせたときには最低限のマナーに気をつかって業務にあたりますよね。日本の多くのマナーは相手への敬意を示すことの表れだという視点ももって、新しいルールをみつめてみてください。
これまでの“当たり前“に縛られすぎない
謎マナーに気をつけつつ、リモートワーク下でスマートに立ち振る舞うには、これまで当然と思っていたことを見直してアップデートする必要があります。ここではリモートワークで気をつけたいビジネスマナーの基本の「き」をご紹介します。
リモート環境は自分で整える
会社勤めの場合、ハードウェアや備品などの環境は会社が用意してくれるのが当たり前と思っていますよね。リモート下でもデバイスを支給され、仕事にかかる通信費を経費で計上できる場合もあるでしょう。
どんな場所でも仕事にできるリモートワークですが、スムーズに業務が進められる環境かを自分で確認して整えることは、リモートワークの基本中の基本。家庭用のインターネット環境のままでは仕事が進まずトラブルになることもあります。Web会議などに取り組む場合は、予定より早めに通信環境の確認をしておくことがマストです。
メールのマナーはチャットには当てはまらない
メールのマナーをチャットにも当てはめていませんか? そもそもチャットは「雑談」という意味で、複数人がリアルタイムに文字を入力し会話を交わすツールです。メールとは用途が違うので注意してください。
メールでは、顔の見えない相手に失礼のないよう丁寧な前置きをメッセージしてから本題に入りますが、チャットで会話が続いているときには不要です。話の流れを切ってしまうので、要点が見えにくくなり非効率だからです。
一方、いくら即レスと簡潔な内容が大事なチャットでも、プライベートの友達とするように思いつくままにメッセージを送り、コロコロ意見を変えるのもマナー違反。「やっぱりこうして」「さっきのは無し」が続くと、肝心なことを見落とすリスクがあります。そのうち既読スルーされてしまうかもしれませんよ。
カメラからの見え方・聞こえ方を気をつける
リモートワークになって初めてWeb会議やビデオ通話を使用したという方も多いと思います。PC内蔵のカメラやマイクは、それほど映像や声をクリアに拾ってくれません。それに、デバイスを通した画面や声は対面よりも冷たい印象になることがあります。声のトーンやカメラ写りで少しでもはっきり聞こえる・見えるように自分でコントロールするのが最低限のマナーです。「背景に写るものに注意」「照明を明るく」「逆光にしない」「カメラの角度を下げすぎない」「画面の相手ではなくレンズを見る」「声のトーンを上げる」「ゆっくり丁寧に話す」など、気を配るほどに相手に与える印象は良くなります。余裕があれば、外付けのカメラやマイクを設置しましょう。
自分なりのオフィスカジュアルを
リモートならフルメイクやスーツ着用はいらないと思いますが、最低限の身だしなみは考えましょう。「仕事なんだから落ち着いた色を」と暗い服を着ているとカメラうつりが重くなって、体の表面積をのっぺりと大きく見せてしまいますよ。明るいカラーを着るとカメラ越しには軽やかにうつります。
情報セキュリティ意識を高める
クライアント名や担当者の名前などを、駅やホテルのロビーなどで大声で話す人を見かけませんか? 場所をわきまえるという初歩的なことを、リモートワークに慣れない方は忘れてしまいがちです。重要資料を持ち帰らなくてはならないこともあるでしょうから、会社のデバイスで迂闊に不要なウェブサイトを開かない、資料を置き忘れないなど、セキュリティ対策は慎重なくらいにしておきましょう。「うっかり」が身を滅ぼすかもしれないと肝に銘じるくらいでちょうどいいです。
無用なハラスメントを生み出さない
屋外や自宅で行うリモートは、つい仕事相手のプライベートにも踏み込む話題をしてしまいがちです。世間話程度の質問はもちろんコミュニケーションとしてアリですが、相手にとってはセクハラ、モラハラと捉えられることもあることも気をつけて。
Web会議やビデオ通話では、ベッド、クローゼットなどのプライベートがわかるようなカメラアングルにも注意しましょう。犯罪までいかなくとも無用なハラスメントを生んでしまうこともあります。無頓着すぎるのは相手にとっても迷惑になってしまいますよ。
ニューノーマルな働き方を身につけよう
今後アフターコロナの時代を迎えても、ビジネスは非接触のリモートワークが加速するはずです。働き方が変わるたびに謎マナーが生まれそうですが、必要性を見極める目とビジネスマナーの立ち振る舞い方をアップデートして、ニューノーマルを切り拓いてくださいね。