「旅をしながら働く」「場所に縛られず働く」「旅するように働く」などさまざまな形があるトラベルワーク。
当メディアでは、そのようにさまざまな形で仕事に向き合う人の働き方にフィーチャーしていきます。
今回は、クリエイターとして活動するかも井かもさんのルーティンや仕事へのやりがい、 「好き」を「仕事」にすることのリアルをお話ししていただきました。
プロフィール
かも井かも
ライティングを中心に、イラストやデザインの分野で活動中。クリエイティブな分野と動物に関わる仕事に常に興味を持ちつつ動いています。
●Instagram
@かも井かも
@鴨井
●Twitter
@maybekamo
作品・活動への想い
可愛い絵柄が自分の絵の特徴なのですが、ほの暗い世界観を持っているので上手くブレンドしたものを生み出せるようにと考えています。
お仕事では特に音楽界隈との親和性が高いようで、イラストでお手伝いさせていただくことが多いです。練習として好きな曲のイメージイラストを趣味で描くこともあります。
ライティングではジャンルを絞らずお仕事を受注。
元々知らないことを知るというのが好きだったこともあり、リサーチ作業はいつも楽しんで行っていますし、苦にならないです。
もちろん苦手な分野やお断りする内容もありますが、今までお断りしたことはほとんどないですね。
活動をはじめたきっかけ
ちょっと昔話ですが、幼少期の記憶には最初からドーベルマンの男の子がいます。小学生の頃に猫の男の子が加わりました。ドーベルマンはきちんとした愛のあるブリーダーさんから、猫は里親募集から迎えた子たちです。それぞれ私の人格形成に大きく関わったといえる存在。「大切な相手は自分で守る」とか「優しさは見た目だけでは測れない」とか、そういったことを彼らに教えてもらったと思います。ドーベルマンは怖がられる犬種ですが、全くそんなことはなく、優しすぎる性格の子でした。それでも力の強い生き物なので、母に叱られる私を守ってくれたこともあるそうです。後から迎えた猫がすぐに警戒を解いたのも、優しさが通じたからだと思います。
この幼少期の生活のおかげで犬猫動物全般が大好きなのですが、大人になった今、好きが高じて保護活動へ興味を持っています。
保護に携わる生活・自分が保護っ子を迎えられることを目指したときに自由度の高いクリエイティブな仕事が良いと判断し、本格的に活動をはじめたのがきっかけです。
保護活動関連では、保護団体の方からご依頼をいただいて、チャリティーグッズやポスターのイラストを描かせていただいています。ほかにも、犬用おやつを販売しているお店のノベルティ用イラストを描かせていただくこともあります。ご依頼いただく犬種やモデルとなるワンちゃんたちの性格や顔の特徴を、イラストに落とし込むのが楽しいです。
保護団体や個人の保護活動者さんとの交流も増え、モチベは上がるばかりです。
本業・前職
実は私、就活をしたことがないんです。
高校でデザインを専攻し写真の専門学校に入ってから、写真用具などの出費がかさんだためキャバクラでキャストとして数年働いていました。
キャバクラでは色々な立場や考え方、性格の人とお話しすることが多かったので、普通の20歳では知りえないような業界のお話も聞きました。大手企業の専務と一緒にカラオケする機会なんて、普通はないですしね。
立場が違っても皆さん人間ですし、性格もさまざまで。とはいえ落ち込んだり悩んだり楽しんだりする時間があるのは共通なので、人を立場や肩書だけで判断することがなくなりました。
それと、どの店舗に行ってもナンバーワンのお姉さんは皆さん立ち居振る舞いが美しいことも大きな学びでした。顔が良いだけでは上には行けず、話の内容や振る舞い、気遣いにも高いレベルが求められるというのは、世間のイメージと差があるなと感じました。実際に経験してみないと、その世界の本質は見えないものだなと学びましたね。
クリエイターとして生計を立てるまで
専門学校の中退後もキャバクラを続け、コロナ禍で店舗休業が決まった際に父の自営業の手伝いに転向。
事務と営業をこなしつつ、同時進行でWebライターのお仕事をはじめました。加えて、イラストの有償依頼も開始して今に至ります。
今はクリエイティブ活動だけで生計を立てられています。一応!
最初は兼業から、少しずつ収入のバランスをクリエイティブな活動へ寄せていきましたが、安定的に仕事があるわけではないので毎月頭をひねっています(単価を上げるか、本数を増やすか、新規営業をかけるべきかをぐるぐると…)。
ただ、経験値や実務期間が増えるほど仕事はとりやすくなるので、まさに継続は力なりです。良くも悪くも日本では「〇年やっています」が強みになるのを、1年過ぎて実感しています。
仕事・生活・休暇のバランスのとりかた
作業をする日のルーティン
平日と土日祝関係なく、常に何かしらしています。執筆であったり絵であったりはさまざまですが、だいたい1日のうちにどちらにも触れるように意識して生活しています。家で集中できないときはカフェに行くことも。買い物も済ませられるので月に数回はあるかもしれません。
絵に関しては数日でも開くとすぐ描き方を忘れてしまうので、「毎日なんでもいいから描く」というように決めています。らくがきでも動物でも人物でも、毎日必ずペンを持つのはおそらく唯一の自分ルールですね。
継続のコツについては、「0じゃなければヨシ」と考えるようにしています。絵なら、10秒で描けるようなうさぎでも良いんです。
体づくりでも、例えば「1週間で腹筋を割る!」みたいなメニューは続かないので、「毎日気が向いたものを1つ以上やる」程度の意識で続けています。腹筋5回とかなら毎日やってもつらくないですが、やらないより絶対に良いことなので、この程度のゆるい意識が継続には大切だと考えています。
たまにキツめのトレーニングをしたり、がっつり1枚描いたりするのも大事ですが、それは気が向いたときだけで良いと思っています。
休みの日の過ごし方
休みの日に出かけるというより、出かける日は作業をしないという感じです。
オタク活動では県外へ足をのばしたり泊まりがけになったりするときもあるので、そういう予定は早めに決めて仕事の方を調整します。どうしても調整しきれないときは出先にツールを持って行くか、執筆を優先して出先や移動中にイラストの作業をします。パソコンは重いので、遠出には連れていきたくないのが本音です。
創作に欠かせない道具や場所
自宅が一番ですが、気分を変えるために外で仕事をすることももちろんあります。執筆はPC、イラストはiPadで作業ができるため場所を選ばないのが嬉しいです。
こだわりというこだわりはあまり持たずにいますが、イラストのポーズ集や構図集、デザインの基礎やカラー集、それから色彩検定の本など資料は色々と買いあさって活用していますね。
その他、デスク周りでいえば収納箱の上やライトの下など視界に入る場所に、ぎっちり推しのグッズを置いてテンションを上げられるようにしているのはこだわりかもしれません。アクリルスタンドやぬいぐるみ、ポストカードなどを飾っています。
特に、好きなイラストレーターさんのポストカードは創作意欲がわくのでお気に入りです。
「好き」を「仕事」にすることについて
困難から得られる経験を喜べるか
「好きなことで生きていく」というのが流行りではあるのですが、個人的には好きなことを仕事にしている、というよりは応用しているイメージでいます。好きなことがそのままお金になるわけではないですから。
「好きなことを仕事に」というイメージではじめてしまうと、どうしても「好きなことなのに苦しい」と感じて、嫌になってしまうのだと考えています。なので「好きなことをベースに、仕事ではこういうふうに動く・考える」というイメージで、割り切る考え方はある程度必要ですね。
仕事では相手の要望に極力応えなければならないので、「できません」では通らないこともあります。プライベートで描いていれば逃げられる部分に、嫌でも向き合わなければならないタイミングも少なくありません。
イラストでいえば、私もダイナミックな構図は苦手で、要望があれば資料を見たり自分で写真を撮ったりしてなんとか形にしますが、やっぱり苦しいです。逃げてきたぶん、上手く描けないし…
しかし、そこで逃げられなくなって嫌になってやめるか、その仕事から得られるスキルや経験を喜べるかが、「好きなことを仕事にできるかどうか」の違いなんじゃないかなと思います。
そこは上手い・下手ではなく、性格の向き不向きに依るところが大きいと考えています。
仕事としてのモノづくりのやりがい
他者が関わり価値を交換する、仕事でのモノづくりには「喜んでくれる」「人の力になる」などのやりがいがあります。個人の趣味でのモノづくりは自己満足だけでも完結しますし、飽きたら投げ出せるので全然違いますね。
私は他者との価値交換という部分にやりがいを感じます。金銭に見合うかそれ以上の成果物を渡して感動を提供したいです。ことクリエイティブ分野においては特に相手の感情に触れやすいと思うのですが、やっぱりネガティブなほうには動かしたくないですよね。「良かった」「嬉しい」と思っていただけるように意識して活動しています。
大事なのは「自分が自分の作品を好きと思えること」
個人的には、作ったモノに対して「好き」と言われるのがすごく好きです。「上手い」ももちろん嬉しいですが、お世辞である可能性が捨てきれない気がしてしまって。
「好き」「嫌い」は見た人個人の持つ感情なので否定のしようがないし、そのまま受け取りやすい誉め言葉だと思います。
写真の専門学校に行っていたとき、コンクールなどの審査について「結局審査員の好みなんだよ」と言っていた方がいました。その方も審査員をすることがあるのですが、現場では好きかどうかで選ばれるのだと。
それがすごく印象的で、何かが吹っ切れたような気持ちになったのを覚えています。
万人受けしなくても、自分の作ったモノを「好き」と言ってくれる人がいるならそれで良い。自分が自分の作品を好きと思えることを優先してモノづくりができるようになりました。
自身のクリエイターとしての強みや価値
依頼者とのコミュニケーション能力が自分の仕事に付随している価値だと思います。迅速に・素直に連絡をとりつつ双方の疑問を逐一解消しながら仕事をしているので、結果に納得していただける・納得できることが強みです。
「これはどう?これは何?こういうふうにできる?」といったことをお互いにやり取りすることで「また一緒に仕事したい」と双方が感じられるのは大きな価値だと考えています。
加えて、前述したキャバクラでの経験などがバックにあることで、多角的な視点を持っていることも強みです。漫画も小説も読みますが、何を読むときもキャラクターごとの価値観に注目する癖があるかもしれません。
人によって物事の見え方は違う、という部分を意識して執筆や制作・コミュニケーションに取り組んでいます。まだまだ視野が狭くなるときもありますが、息を入れつつですね。
「企業」と仕事をすることへの想い
企業さんといっても担当者さんは人間なので、丁寧な対応を心がけていれば大丈夫だと思っています。それでも誰もが知っている大手企業さんとのやり取りは緊張してしまいますが…
企業さんとのお仕事では、自分の携わった成果物がより多くの人の目に触れるというのがやりがいに繋がります。大手メディアや企業さんとの仕事は厳しい面も多いですが、それだけ身に付くことも大きいので積極的に取り組みたいです。
今後の活動について
現在までにもいくつか動物や保護に関わるお仕事は受けているのですが、更に動物保護に関わる分野のお仕事を増やせたらなと考えています。
ほかにもLGBTQ・SNS文化・日本文化なども知識を深めたり知見を広げたりしつつ、執筆でもイラストでも関われたら嬉しいです。特に、LGBTQが日本でも受け入れられるように活動していきたいと考えています。関連する活動者との繋がりを増やし、そこで自分のスキルや経験を活かした力添えをできればいいなと。
LGBTQについて発信しているメディアなどに売り込みをかけていこうと思っているところです。
今後も広い分野でモノづくりをして生きていきたいですね。