「旅をしながら働く」「場所に縛られず働く」「旅するように働く」などさまざまな形があるトラベルワーク。当メディアでは、そのようにさまざまな形で仕事に向き合う人の働き方にフィーチャーしていきます。
今回は、株式会社muljob、株式会社RycoM代表取締役社長の九鬼豊広さんにお話を伺いました。
九鬼豊広(くきとよひろ)さんのプロフィール
ー知人から「トラベルワークをしている人」といえば九鬼さんだとお伺いしました。まずは、現在のご職業について教えてください。
今日も大阪から東京に飛んできました(笑)
現在は、株式会社muljob、株式会社RycoM代表取締役社長や他複数社役員をしながら、主に経営コンサル(組織作り、管理者育成、OPS見直し)、ファイナンシャルプランニング、コーチング、採用戦略設計、BtoBマッチングサービス、生命保険、損害保険代理店を行っています。
ーこれまでのご経歴は?
立命館大学卒業後、新卒で三井住友海上火災保険株式会社に入社し、自動車事故対応部署を経て自動車ディーラーの代理店営業担当になりました。2017年に株式会社エス・エム・エスに転職し、西日本クロスセル部門の西日本営業責任者を経て、現職に至ります。
仕事の中で得た経験値が、また次の仕事を作る
ー2つの会社を経営しながら、6つの業務をやっているということでしょうか?
理解不能ですよね(笑)あまりにも時間と場所に縛られず働けているので、時々不自由になりたいなと思うことがあります。
ー羨ましいです(笑)このように、色々な仕事をしようと思ったきっかけは?
結論から言うとリスクヘッジです。そもそも収入の柱が1本であることが不安定だなと思っていたんです。勤め先がつぶれたり、クビになったりしたら終わりじゃないですか。リスクヘッジのために、収入源を1つにしないということを学生の頃から考えていました。
ー仕事を選ぶ時の基準は何ですか?
これがやりたいというのは特にないんですよね。色々なご縁の中で、自分のやれることやできることが増え、シンプルに人に喜んでもらえるものに集中的にリソースを投下してきたイメージです。
何事もそうだと思うのですが、自分で機会を作って、そこで得た経験値がまた次の機会を作る。色々な仕事をやっている中で自分の中で気づきが出てきて、また新しい機会が見えてくるイメージですね。
ーなるほど。自分がやってきた中で気づいたことを、行動に移していった結果が今のご職業ということですね。新しいことを始める時、それこそ独立する時などに不安はなかったのでしょうか?
何をやるのも不安はもちろんありました。でも、なんとかなるだろうと思っていました。
ーポジティブなんですね。
性格的なものよりも経験ですかね。経験上、なんとかなると思っていました。
失敗したら、なぜ失敗したかを検証するんです。何が良くなかったのかを反省し修正点を加えてもう一度やってみる。何事もその繰り返しですよね。そんなことを日々やっています。
九鬼さんが働く上で大切にしている「スタンス」とは
ーこれだけ色々なご職業を兼ねていると困ったこととか、辛いこととかはないですか?
ないですね。辛いことはしないし、働きたくない人とは働かない。会いたくない人とは会わないので。
ーすごい。そこにたどり着くまでに意識していたこととかはありますか?
ずばり「スタンス」です。これは、働く上で今も大切にしていることですね。
ースタンス。詳しく教えてほしいです!
自分の仕事に対する取り組み方や、姿勢ですね。経営者であってもサラリーマンであっても、フリーランスであっても変わらない。スタンスは高くあるべきです。
例えばレスポンスを早くする、約束を守るなど、人として当たり前のことを当たり前にやること。意外とできてない人が多いと感じています。
ー当たり前のことを当たり前にやる。大切なことですよね。最近、フリーランスの人や副業を始める人が増えています。そのような人はモノを売るというよりも、自分自身が商品となってスキルやナレッジを提供するということが多いかと思います。自分の価値を高めるためには何をすれば良いかアドバイスをください。
めちゃめちゃ難しいところですよね。
等しく全員に言えるのは、当たり前の基準が低い人は、一点突破で何か突き抜けていてもダメ。先に述べたスタンスの話の繰り返しになりますが、レスが遅いということ。レスが遅いとそもそも仕事がもらえない。そうなると単価が下がる…と。そこの競争に巻き込まれないようにすることが大事だと思います。
僕も「九鬼さんの紹介なら間違いない」と言ってもらえることが多いです。そう思われるブランディングをしていくべきですよね。あとは、トラベルワークは準備のスポーツだと思っています。
ー準備のスポーツ?
はい。移動するにしてもその先のアポやホーム拠点でのアポなど、事前準備をしっかりしなければいけない。アポがなければ移動した先で無駄な時間を過ごしてしまう可能性が高まるので、行った先でアポをたくさん入れる。アポがたくさんあるということは、打ち合わせの準備もたくさん必要になる。例えば資料作成がイマイチな状態で打ち合わせをしてしまうと、濃厚で効率的な打ち合わせができなくなってしまい、無駄足を踏むことになる。
また、良く理解していない相手との会話やアポの時は、事前にHPを見たり、調べたりして情報収集をします。先回りできることって日常生活でもあると思うんですけど、それを仕事でも行うという感じです。そのあたりを徹底することが自分の価値を高めるために必須ですかね。
九鬼さんにとって「働く」とは
ー最後に、九鬼さんにとって「働く」とは何でしょうか。
働くという意識をなくすことですかね。僕にとって働くという概念はあまりないんです。仕事をしていると思っていないんですよね。不思議な感覚なんですが…逆に働くって何ですか?
ーお金を稼ぐことですかね?
それなら投資で良いと思うんです。みんななぜか労働をする。
僕は、働くという意識がない方が良いと思うんですよね。好きなことというよりも、息を吸うレベルでできることがクライアントにとってメリットであると良い。息を吸うことにモチベーションも苦労もしんどさもないじゃないですか。それが仕事であれば良いなと思っています。
ーいつからそのように「働く」という意識がなくなりましたか?
入社1年目から社会人6~7年目くらいまではありましたね。7年目に転職してからなくなりました。何事も自分の経験値として跳ね返ってくるし、その経験値がまた次の機会を作る、ということに気が付いたんですよね。働くというよりも、経験値を取りに行っているイメージです。人が20年かかってやっている作業を7年くらいでやりましたね。そうしたら今の状態になったという感じです(笑)
ーなるほど。働くというよりも、経験値を高めているというイメージなんですね。
はい。あとは仕事で出会った人達と村づくりをしている感覚です。
ー村づくり?
はい。自分と似た働くスタンスやマインドを持っている方との繋がりを強固にしていくイメージです。すると、コミュニティ内で仕事がグルグル回るようになりますし、コミュニティがどんどん拡張されていくんです。それを意図的に追い続けてきたし、作り続けてきましたね。結局それが最強だと思っています。
筆者後記
お話を聞きながらも、痛いほどに勉強になった今回のインタビュー。「当たり前のことを当たり前に」そう話す九鬼さんでしたが、確かに今回インタビューに至るまでのやりとりも驚くほどレスポンスが早かったのを思い出しました。
その一方「トラベルワーカーっぽいところは?」とお伺いすると、「朝起きた時に、『今どこにいるんだっけ?』となるところ」「新幹線の終電の時間が頭に入っていること」と大阪発東京行き、東京発大阪行き、そして名古屋発東京行きの新幹線の終電を暗唱してくれるチャーミングさも。
九鬼さんの仕事に対する姿勢が筆者の想像と異なりすぎて、途中から話を理解するのに時間を要していたのですが、嫌な顔一つせず具体例を交えながらお話をしていただき、本当にありがたかったです。取材をお受けいただきありがとうございました。