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タイのBOIとは?バンコクで法人登記して認定企業になるまでの奮闘記

タイのビル街の風景

「グローバル企業」という響きだけでご飯が進むという経営者の皆様。こんにちは、高橋です。私は株式会社アステルという広告系企業を2015年から日本で経営しております。2021年にグローバル展開第一弾としてバンコクで法人登記をし、同法人がBOIの認定企業になりました。
今回は「海外展開をする第一歩としてタイを選んだ理由」「法人登記の手続きの進め方」「BOIを申請してから認定証明書を発給してもらうまでの流れ」などをご紹介します。
本記事を読んでいただいた方がタイに進出して、バンコクで何か一緒にお仕事ができたら光栄です。

市場から見る、海外展開にタイを選んだ理由とは?

タイ人とタイの街並み

ではまず「なぜタイを初めてのグローバル拠点にしたのか?」にお答えするため、タイの市場について少しみていきましょう。

タイのEC市場

我々の仕事はインターネット広告に関連するコンテンツを制作することが主なので、特にEコマース市場のポテンシャルには注視しています。
タイのEC市場規模はASEAN主要国の中でもっとも大きく、2,300万ドルを超えています。年平均成長率は15%程度と、市場を拡大している最中。
クレジットカードの保有率がまだ10%程度しかないことを考えると、今後さらにタイのEC市場は拡大していくことが予想できます。

参考:タイにおけるオンライン日用品市場(EC)に関する調査

タイのインターネット利用状況

タイのインターネットの利用時間は11時間超と多くの人が1日の約半分をネットに費やしており、Facebook・YouTube・LINEの利用率はほぼ100%です。

参考:JETRO

タイにおける日系企業の進出状況

タイにおいて日系企業は5,400社程が進出をしていますが、そのうち広告業はわずか36社とまだ参入余地は十分に残されている状況です。

参考:タイ日系企業進出動向調査 2020 年 調査結果

法人登記の前には見込み客の開拓を

弊社では法人を登記する前に、見込み客を開拓しました。
元々アステルジャパンで大手広告代理店との取引があるので、まずは大手広告代理店の現地法人と打ち合わせを行ったところ、すでに取引があったこともありタイ法人を創れば仕事はすぐに進められそうな状況でした。
なお、打ち合わせを組むにあたっては日本から手を回すのではなく、いきなり現地の担当者にアポイントをとりつけました。新規の取引には非常にオープンな雰囲気があり、打ち合わせが組みやすいのはタイで事業展開をするうえでもっとも大きいメリットかもしれません。

タイでの法人登記の進め方

法人登記の書類は全てタイ語で作成する必要があります。そのため、タイへの企業進出を支援している現地のコンサル会社「jozu」に依頼をしました。
※もしご興味がおありでしたらお繋ぎいたします。

印鑑制作

法人登記の書類に必須なのが会社の印鑑です。タイは日本以上に紙文化が残っていますので、かなり多くの書類にサイン・捺印が必要になります。同じ名前の法人がないかチェックをしたうえで印鑑を作成する必要があり、印鑑制作もコンサル会社に依頼することをおすすめします。

オフィス開設

タイのシェアオフィス
アステルタイ支社があるシェアオフィス

法人登記手続きをする際にはオフィスの写真、会社の看板、賃貸借契約書、建物使用許諾書を提出する必要があるため、登記手続きの前にオフィスを契約しておかなければなりません。弊社はGMMというタイ最大手メディア企業のビル内にシェアオフィスを借りています。
※プライベートオフィスで会社の看板がないといけないのでご注意
※こちらもご興味がおありでしたらお繋ぎいたします。

登記簿謄本制作

登記簿書類は全てタイ語で作成する必要がありますがタイ語は全くわからないため、まずは日本語と英語で会社概要資料を作成し、コンサルタントに見てもらいました。
社会保険、税務署の手続きなどサインをしなくてはならない書類が大量になりますので、オンラインで登記書類を整えたら、現地にいって各窓口での手続きを行います。

株主構成

株主はタイ資本を51%以上、外国資本を49%以下にする必要があります。現在弊社の株主名簿にはタイ人役員が2名おり、その者が25.5%ずつ株を所有しています。51%以上株を持っていないとトラブルになりかねないので、今後、アステル関連資本が51%になるように資本政策を行ってまいります。

法人登記完了

印鑑の作成、オフィスの手続き、登記書類の制作、各窓口への提出を済ませてしばらくすると登記完了となります。ここまでの全ての工程でおおよそ2ヶ月かかりました。

銀行口座開設

法人登記が完了したら次にやるべきは銀行口座の開設で、登記簿謄本と会社の印鑑、パスポートをもって現地の銀行に行く必要があります。手続きの際は、日本対応デスクがあるカシコン銀行のスクンビット33支店がおすすめです。
コロナ禍もあり、登記完了後になかなか現地に行く目途がたたなかったため「日本で口座開設ができないか」と問い合わせたのですが、どうしても現地の窓口での手続きが必要とのことでした。

資本金入金

法人口座ができたら資本金の入金です。
海外送金に時間がかかるので、資本金の入金証明書が必要な場合、期日の1週間ほど前には送金を完了させておくと良いでしょう。
※資本金の入金証明書はBOIの発給手続きに必要です。

タイのBOIとは?申請から発給完了までの流れ

ここでは、そもそも「BOIとは何か」を簡単に説明します。
BOI対象の産業は全部で10あり、弊社はその中の「デジタル産業」で認定を受けました。

BOIに認定されると外資100%で会社設立が可能になるほか、「外国人1人を採用するにあたりタイ人を4名採用しなくてはならない」という条件が免除されます。加えて、税制上も最大8年間まで法人所得税が免除されるほか、インフラコストを減価償却に加えて控除することができるなど、数多くの恩恵を受けることが可能になります。
タイ政府は外資系企業の税制面を優遇することで、雇用の創出、あるいは国の発展に役立つノウハウやソリューションを海外から仕入れることを目指しています。

なお、弊社はICT産業における5.7.2の企業アプリケーションソフトウェアおよびデジタルコンテンツの開発という領域でBOI認定を受けており、この場合、法人税免除期間は5年間です。

プレゼン資料作成

BOIの認定を受けるには「どんなサービスを開発し、そのサービスがタイにとってどのようなメリットをもたらすのか」を担当官にプレゼンする必要があります。弊社は英語版とタイ語版を準備し、それぞれ30ページずつの資料になりました。
担当官にプレゼンする際は英語で行いますが、タイ語でフォローしていただかないと伝わらない可能性もありますので、タイ語ができる方と一緒にプレゼンに望むのが良いでしょう。

プレゼン当日

タイの建物に入る人

BOI本部(555 Vibhavadi Rangsit Rd, Chatuchak, Bangkok 10900 / Ha Yaek Lat Phraoが最寄り駅)の一室でプレゼンを行います。ブースが複数用意されていて、当日は私以外にもプレゼンを行っている外国人の方がいました。
プレゼンの際には「開発する際に使うツールは?」「言語は?」「開発費用は?」「開発スケジュールは?」「タイにとってどんなメリットがある?」など、資料内に記載していることをより詳しく伝え、適宜質問にも受け応えていきます。

BOI発給手続き

1時間程度のプレゼンを終えてから審査に入り、その後BOIの仮認証がおりるまで約1ヶ月の時間がかかりました。BOIの仮認証が終わったら、本承認を受けるための手続きを進めます。

具体的には、資本金の入金証明書や3ヵ年の事業計画などを提出して正式にBOIの認証を受けることになります。BOIの認証を受ける以前に法人登記の手続きが完了している場合、登記に必要だった書類と資本金の入金証明、3ヵ年の事業計画を提出すれば、正式にBOIの認証を受けることができます。
なお、弊社はBOIの認証が受けられない場合はバンコクへの進出を見送る可能性があったので、BOIの仮認証を受けたのちに法人手続きを完了させました。

タイでの登記~BOIまでの実際のスケジュール

新会社設立登記

3/23~3/31
社判の作製
新会社登記書類の作成・完成

4/1~4/17
新会社登記資料の作成

4/20~4/21
最終確認

4/22~4/23
商務省の事業開発部にて新会社登記手続き

VAT登記

4/24~4/30
必要書類の準備(会社看板の作製や事務所がある建物や事務所内の写真の撮影を含め)

4/30~5/8
VAT登記資料を作成

5/11~5/15
税務局にてVAT登記手続き、VAT登記申請受領書(PP01)の取得

~6/15
VAT登録証(PP20)の受け取り

社会保険登録・社員の加入

4/24~4/30
必要書類の準備、タイ人スタッフの雇用、タイ人スタッフに関する情報を提供

4/30~4/31
社会保険登録・社員名簿の作成

5/11~5/15
社会保険庁にて社会保険登録・社員の加入手続き

~6/15
社会保険登録証の受け取り

銀行口座開設

4/24~5/8
必要書類の準備

5/11~5/15
銀行にて銀行口座開設

5/18~5/22
資本金の25%の送金、海外送金証明書とタイ側銀行発行資本金受取証明の取得

税務申告・社会保険申告・月次決算(会社ができてから、義務として実施すること

毎月の5日
会計税務資料をコンサル会社事務所まで送付

毎月の15日
VAT申告・納付(申告は弊社代行、納付が御社義務)
→オンラインの場合、期限が+8になります。オンライン利用申請が必要

毎月の7日
源泉徴収税申告・納付(申告は弊社代行、納付が御社義務
→オンラインの場合、期限が+8になります。オンライン利用申請が必要

毎月の15日
社会保険申告・納付

毎月の30日まで
月次決算書の受け取り

BOI本ライセンス取得手続き

~3/20
BOI仮承認書を確認

3/23~3/27
BOIに奨励を受けると通知

~4/23
新会社登記の完了

~5/22
資本金の25%の送金、海外送金証明書とタイ側銀行発行資本金受取証明の取得

5/25~5/29
BOI本ライセンス取得資料にサイン・捺印

6/1~6/5
BOIへの本ライセンス取得申請手続き

6/22
BOI本ライセンスの取得 

※実際はコロナウイルス感染拡大の影響により、BOIの取得申請手続きが1年半遅れてしまいました。3回の延長申請を行いましたが、デッドが2021年の9月26日だったので隔離生活を覚悟のうえで2021年8月〜9月の1ヶ月間、バンコクに行ってきました。

▼その際の様子はこちらの記事でご覧ください!

コロナ禍タイ出張!持ち物と隔離生活の様子【30日以内の滞在・観光ビザ】

タイへの進出を第一歩に!今後の展望

今後アステルは東京とバンコクを中心にSaaS事業を推し進めていきます。海外展開はバンコクだけで終わらず、今後12年以内に複数拠点を立ち上げる予定です。
国内外で弊社サービスTRAVEL WORKERを使う企業が100,000社に到達するよう、私、高橋を中心に突き進みます。

今後もこれまで行ってきた広告コンテンツ制作事業を止めることはないですし、むしろTRAVEL WORKERの導入企業数が増えていけば行くほど、制作事業も勢いを増していくと考えています。是非これからのアステルに注目していただければ幸いです。

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投稿者プロフィール

TAKAHASHI
TAKAHASHI
株式会社アステルの社長。これまで数多くの大手企業・行政組織の広告コンテンツ制作事業を行ってきた。現在は自社プロダクトであるフリーランスマネジメントシステム「Travel Worker」を成長させることに熱狂している。

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