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2021.07.12

【NO RULES】NETFLIXの企業文化はベンチャーに有用か?経営者が読んでみた

NETFLIXといえばFAANGの「N」にあたる、説明不要なくらい有名な世界的定額制動画ストリーミングサービスを提供する企業です。各地のカルチャーにマッチしたコンテンツを提供すべく世界中に制作拠点を設けており、NETFLIXでは様々な国籍の人が様々な場所で日々仕事をしています。

それ故、出張で海外に行く社員も多いようですが、飛行機で出張に行く場合にはファーストクラスのチケットを経費で手配することも可能だというから驚きです。今回はそんなNETFLIXの働き方・採用方法などにフォーカスした本をご紹介します。

トラベルワークという働き方を体現している弊社としては見逃せず、この本を手にとりました。今回は本書の要点をまとめながら、当メディア運営会社(株式会社アステル)の社長、高橋の感想を加えていきます。

NETFLIXにあって他の会社にはないもの

●手続きより社員を重視
社員それぞれに意思決定を促し、その決定を尊重するという文化が根づいています。それが会社に柔軟性や創造性をもたらしてくれるのです。

●効率よりイノベーションを重んじる
本書では「イノベーションを生むにはどのような仕事環境が最適であるのか?」の答えを導き出すヒントが書かれています。

●ほとんど制約のないカルチャー
休暇規定や経費の稟議申請など、通常の会社には必ずと言って良いほどあるルールがありません。

●能力密度を高めて最高のパフォーマンスを引き出す
「本当に優秀な社員のみを集めることで各々のパフォーマンスを最大化させる」という、理解しつつも難しい課題を実現しています。

●社員に対してコントロールではなくコンテキストを伝えることを優先
例えばコントロールによるリーダーシップは、「パーティーに行っている間、アルコールが提供されないかを監視し続ける」形ですが、コンテキストによるリーダーシップでは「未成年で飲酒をする危険性を説明し、息子が危険性を理解したとわかったら監視は一切せず、どのパーティーに行くかは息子の判断に任せる」という形です。

NETFLIXカルチャーを体現するまでの3段階ステップ

ここでは、自分の会社をNETFLIX化させるために必要なステップをご紹介します。全てを実行することは難しくても、取り入れるべき要素が多く見つかるはずです。

《第一段階》

優秀な社員だけを集めて能力密度を高める
フィードバックの機会を多く設けて率直さを求める
休暇、出張、支出などのコントロールを撤廃していく

《第二段階》

最高水準の報酬を支払い、能力密度を一段と高める
組織の透明性を強化して率直さをさらに高める
意思決定の承認を不要とし、もっと多くのコントロールを廃止する

《第三段階》

キーパーテストを行い能力密度を最大限に高める
フィードバックサイクルを生み出し、率直さを最大限に高める
コンテキストによりマネジメントでコントロールをほぼ撤廃する

リード・ヘイスティングス (2020). NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX 日本経済新聞出版

第一段階の率直さ

本書に限らずフィードバックの大切さを説くビジネス書が多くありますが、本書でもその大事さを何度も記しています。

フィードバックは面と向かって言える、前向きなものでないとならない。
高いパフォーマンスと私心のないフィードバックが最高のパフォーマンスを引き出す。

《フィードバックをする際の大事な3ステップ》

フィードバックを受け取る時の姿勢では、「帰属のシグナル」つまり感謝が必要だということが述べられています。

フィードバックのガイドライン4A

フィードバックをする際に必要な要素は下記4点になります。

 ・相手を助けようという気持ち(Aim to assist)
 ・行動変化を促す(Actionable)
 ・感謝する(Appriciate)
 ・取捨選択(Accept or Discard)

いつでもどこでもフィードバック

いつでもどこでもフィードバックを与える環境には注意点が必要で、率直なカルチャーを浸透させるには組織からジャーク(協調性のない嫌なやつ)を排除する必要がある

まずは職場の能力密度を高める

職場の能力密度を高め、フィードバックを与え合う環境を生み出すべことが重要だそうです。たしかに、率直なフィードバックと悪口や文句は紙一重とも言えますよね。

第一段階のコントロール撤廃

《休暇規定を撤廃》

第一段階でいきなり休暇規定の撤廃です。経営者であれば「こんなのウチには無理だ」と、この本を読むことを止めようと思った方も少なくないのではないでしょうか?
本書では次のように続きます。

「情報化時代に大事なのは、何時間働いたかではなく、何を達成したか。」
ただし、
1.常に会社の利益を最優先に行動する
2.他の人の達成を妨げるようなことは決してしてはならない
3.あらゆる手を尽くして自分の目標を達成する

このようにモラル規定のようなものが、NETFLIXにも存在するようです。

弊社にも有給の取得可能日数や就業時間が記載された就業規則は存在します。しかし弊社では子育てをしながら働いてくれている社員も多くいるため、就業規則通りの働き方にはならないケースが多々あります。

未婚の社員でも、仕事のパフォーマンスを最大化できるのであれば、「平日に3連休を取得してフェスに行くために休んでもらって結構」というスタンスです。加えて、「オフィスではなく、海が見えるカフェで仕事をした方が捗る」ということであれば、出社はしなくても問題ないです。
当たり前ですが、休んだからといって給料を減額することもありません。休業規定のチャプターにおいては、弊社も創業当初からうまく実践できているのではないかと考えています。

休業に関しての厳しいルールがないゆえに、「パーフェクトな休暇をとろう」と高度な仕事処理能力を発揮してくれているようです。

《出張費と経費の承認プロセスを撤廃》

これは不安ですよね。「社員が会社のお金で旅行三昧、ホテル暮らしでも始めたらどうしよう」「意味のない飲み会ばかり開催したらどうしよう」そう思う経営者が多いのでは?しかしここでも、NETFLIXにはモラル規定があります。

会社のお金は自分のお金のように使うのではなく、「NETFLIXの利益を最優先に行動する」。

ここで重要なのが、あくまでもこのモラル規定はルールではなく経営指針のようなもので、会社が進むべき方向に進むためのガイドブック的な役割を果たすということです。

「入り口ではコンテキストを設定し、出口では目を光らせる」
「与えられた自由を悪用する社員は解雇する必要がある」

といったように、自由を履き違えた社員には迷いなく辞めてもらうそうです。弊社では、社員それぞれに自身の取引高に応じた使用可能な外注費・ツール利用代を鑑みて仕事を効率化してもらっています。
しかし「利益率を高めるべきなのか?」「利益額を高めるべきなのか?」「社員は疲弊しないか?」など、あらゆる経営判断に頭を常に悩ませています。

「会社の利益を最優先に行動する」というコンテキストをうまく機能させるには、非常に高い「質」が求められることになりますので、「質」については社内で継続的に議論していきたいです。

第二段階の能力密度向上

ここは、とても学びになったチャプターのうちのひとつです。
実際、私は「ボーナスを出すことで社員のモチベーションをアップさせることができる」と考えていました。
ですが本書では、

優秀な人材はもともと成功したいという意欲があり、ボーナスの有無にかかわらず全力を尽くす。
私生活にかかわるストレスを減らせるほど高額な報酬をもらえると、社員は非常にクリエイティブになる。しかし、追加のボーナスがもらえるかどうか定かでないと、クリエイティビティは低下する。イノベーションを後押しするのは成果連動型ボーナスではなく、高額の給料である

と書かれています。盲目的にボーナスを支給するのではなく、給与体系は戦略をもっと練っていく必要がありそうです。

第二段階の率直さ

NETFLIXでは、「意欲があり、意識が高く、自己管理に長けた、とびきり責任感の強い人材」が大多数を占めるようになったら、機密事項も含めて重要な情報を社員と共有できるようにしています。

「成功は小声でささやき、失敗は大きな声で叫べ」

このコピー、社内に浸透させたいですね。

第二段階のコントロール撤廃

《上司を喜ばせようとするな。会社にとって最善の行動をとれ》

昇格や昇給を目的とし、上司を喜ばせるような社内政治が発生してはならないことを注意しています。下記は、会社経営をしていくうえでの教訓にすべき内容だ感じました。

社員が失敗しそうな提案を持ってきたら、そもそもなぜその者を採用したのか、なぜその者に個人における最高水準の報酬を払うことにしたのかを思い出すべき。

・その者は抜群に優秀か
・優れた判断力があるか
・会社にポジティブなインパクトを与える能力があるか
・あなたのチームにふさわしい人材か?答えが「ノー」なら会社を去ってもらうべき。
・意思決定の自由を与えていることがNETFLIXの”秘薬”
・長期的に最大の脅威となるのはイノベーションの欠如
・起業家という自己認識を持ってもらう。その賭けが失敗したら、さっさと後始末をして、そこから何を学んだかを話し合えばいい。
・クリエイティブなビジネスでは、迅速に失敗から立ち直ることが最善の策。

《賭けに出る前(と出た後)にやるべきこと》

1.「反対意見を募る」あるいはアイディアを周知する
2.壮大な計画はまず試してみる
3.プロジェクトの提案した者を情報に通じたキャプテンとして賭けにでる
4.成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する
  ・そのプロジェクトから何を学んだのか尋ねる
  ・失敗について大騒ぎしない
  ・失敗を公表するように促す

社員が提案してきた何億円というコストがかかる壮大な計画に対して「よし、まずやってみよう」と言える経営者はどれほどいるでしょうか?さらにその壮大なプロジェクトの進行にほとんど介入をせず、社員に一任することはできますか?抜群に優秀な社員が集まった会社でないと実践は難しいでしょう。

まだ私は、億単位のプロジェクトでは「とりあえずやってみなよ」とはなれませんが、小さい規模の話でも社員が新たなプロジェクトを提案してきた際に「なぜその社員を採用したのか?」「その者は抜群に優秀か?」と自問し、社員を信じ抜くことを実践してみたいと考えています。

第三段階の能力密度向上

・私たちはチームであって、家族ではない。
・NETFLIXをプロスポーツチームと考えるべき。

この言葉もすごく刺さりました。たとえばプロサッカー選手は活躍すれば年俸がアップしますし、活躍ができなければ翌年の契約は更新されないという状態でチームに属しています。これを会社組織でも実現することができれば、本当に強いチームが作れるでしょう。弊社も広告コンテンツ制作事業・BPO事業・トラベルワーク事業のプロスポーツ集団であり続けたいと考えています。


加えて、次に紹介する「キーパーテスト」は、会社が社員を雇用し続けるべきか?を検討する際に有効な手段です。

《キーパーテスト》
チームのメンバーが明日退社をすると言ってきたら、あなたは慰留しますか?それとも少しほっとした気分で退社を受け入れますか?後者ならば、いますぐ退職金を与えて、本気で慰留するようなスタープレーヤーを探そう。

プロサッカー選手でも活躍できなければ違約金が支払われて契約を解除されることがありますが、会社でもそれほどドラスティックなスタンスでいた方が良いと書かれています。

さらに次に紹介する「キーパープロンプトテスト」は、社員が自分の市場価値を確かめるために会社に質問した方が良いとされているテストです。

《キーパーテスト・プロンプト》
「私が退社を考えていると言ったら、どれくらい熱心に引き留めますか?」


注意点:誰かを解雇したら、チームのメンバーに包み隠さず話し、質問には真摯に答える。それが「次は自分かもしれない」という不安解消につながり、会社にたいする信頼感を強める。

社員が会社にこれを尋ねることで、社内の能力密度が高められるといわれています。例えば、チームから契約の話を一方的にするのではなく、当然、活躍した選手はチームに対して翌年の年俸交渉をすることがありますよね。NETFLIXでは会社だけでなく、社員に対してもプロサッカー選手であることを求めているようです。

加えて必要ない人をただ解雇するのではなく、解雇した理由を社内に公表することで、社長やマネージャーの暴走につながりにくくなるとされています。

第三段階の率直さ

「他人の話をするときは、相手に面と向かって言えることしか言うな」
・フィードバックは「スタート」「ストップ」「コンティニュー」を意識。
・フィードバックシートに記入する際は匿名にしないほうがよい。
・フィードバックの結果を昇給や昇格に結びつけるのは止める。
・フィードバックの方式:ライブ360(8人ほどのグループ全員の前でフィードバック)
・フィードバックは4Aガイドラインに従い、即効性のある贈り物として捉えるべき。


注意点:社内政治は徹底排除

フィードバックにおいては、注意して方法を考える必要があるそうです。当たり前ですが相手の悪口ではなく、相手をより良く改善させるためのこと以外は伝えるべきではないとしています。

フィードバックをする際におさえておくべきポイントは下記です。

●時間と場所
ディナーを食べながら実施し、参加者は8人以下。時間は3時間程度。

●フィードバックの方法
・肯定的なものが25%
・改善すべき点の指摘が75%
行動改善につながらない褒め言葉(「君と仕事をするのは楽しい」など)は排除すべき。

●最初が肝心
厳しいフィードバックも寛容に、そして感謝して受け取れるような人物を最初に選ぶ。

第三段階のコントロール撤廃

コントロールではなくコンテキストを

コンテキストによるリーダーシップは、正しい条件が整っていなければうまくいかないと述べられています。正しい条件は次の3点です。

要件1.:能力密度が高い
要件2.:組織の目標が(ミス防止ではなく)イノベーションである
要件3.:疎結合な組織=「情報に通じたキャプテン」モデル=中央集権的なコントロールがほとんどない
疎結合がうまく機能するには、足並みは揃えつつ、それぞれが独立を

本書では、コントロールではなくコンテキストによるリーダーシップを表す引用文が記載されています。

あなたが船をつくろうと思うなら
太鼓をたたいて人を集め 木材を集め 仕事を割り振り 命令するのではなく
茫洋とした 果てしなく広がる海に
恋いこがれる気持ちを 教えよう
(星の王子様)

《全体のコンテキストを設定するための重要な手段》

・エグゼクティブスタッフミーティング
・四半期業績報告ミーティング(QBR)

これらのミーティングの目的は「北極星」=「全員が向かうべき方向性」をしっかり理解してもらうことであり、QBRが終わったらひたすら個人面談を繰り返して、「社内の足並みが揃っているか」「コンテキストが不足していないか」を確かめることを定期的に行うべきだと書かれています。
弊社も7期目を迎えるこのタイミングで、会社で経営合宿を行うことにしました。

《足並みの揃った組織は「ピラミッド」ではなく「木」》

根っこ:グローバルに成長せよ(CEO)
幹:大きなリスクをとり、多くを学べ(COO)
大きな枝:氷の家と泥壁の小屋をバンコクへ届けよう(バイスプレジデント)
中位くらいの枝:アニメの目標は高く(ディレクター)
小さな枝:リトル・ビームからは多くを学べる(情報に通じたキャプテン)

経営トップや幹部から受け取った情報をもとに、社員が素晴らしい意思決定をして、望ましい方向へ動いているならコンテキストのリーダーシップがうまく機能しているサインだそうです。
社員が思うように動いてくれない場合は社員を責めるのではなく、間違ったコンテキストを与えてしまった自分を責めるべきなのかもしれません。

グローバル企業への道

国が違えば文化が違うためコミュニケーションのとり方やフィードバックの方法も異なり、その違いを国別に認識することでグローバルなマネジメントが可能になります。国別にどのような文化の違いがあるかを判断するには、下記の項目での評価が有用です。

《カルチャーマップ》

1.コミュニケーション(ローコンテキスト or ハイコンテキスト)
2.評価(直接的なネガティブフィードバック or 間接的なネガティブフィードバック)
3.リード(平等主義 or 階層主義)
4.決断(合意志向 or トップダウン式)
5.信頼(タスクベース or 関係ベース)
6.見解の相違(対立型 or 対立回避型)
7.スケジューリング(直線的な直 or 柔軟な時間)

注意点:日本のような間接的文化では正式なフィードバックの場を増やす