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コロナ禍で働き方はどう変化した?2021年の正社員リモートワーク事情

日本でテレワークが導入されたのは1984年のことで、日本電気株式会社(NEC)が吉祥寺エリアにサテライトオフィスを設置したのが始まりとされています。現在、総務省が推進する働き方改革を経て新型コロナウイルス感染拡大に伴い、リモートワークはかつてないほど普及しています。

しかし、それと同時にリモートワークを阻害する問題点も浮き彫りとなり、リモートワーク移行できていない企業が一定数存在するのも事実です。本記事ではコロナ禍の2021年における正社員のリモートワーク事情について統計データを元に探っていきます。

働き方改革から勢いを伸ばすリモートワーク

コロナ以前のリモートワーク実施の実情

総務省の2019年度の調査「デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究」によれば、テレワーク制度を導入しており、今後も継続の見通しのある企業はわずか10.9%に留まりました。働き方改革で成果を上げている施策もあるものの、テレワークに関しては一般的でないことがわかります。日本特有の企業文化やICT導入の遅れなどにより、リモートワークが阻害されているようです。

新型コロナウイルスによるリモートワークで起きた変化

コロナ以前の世の中において、在宅勤務は「特別な事情を抱えた一部の人向け」の制度という印象が強いものでした。育児・介護・通院が必要な人への救済措置の位置付けであった在宅勤務ですが、コロナの感染拡大により特別な事情を持たない社員もワークライフバランスの向上や自己実現の一つの方法として、リモートワークを選択できるようになりました。

その結果プライベート面で起こった変化について、株式会社日本シャルフの「withコロナ時代の働き方調査(2020年)」では「家族と過ごす時間が増えた」「趣味の時間が増えた」と回答する人が多くみられました。

企業としては地方にいる優秀な人材の確保、固定費の削減、社員の生産性向上、離職防止につながり、採用時のアピールポイントになることが利点として挙げられます。加えて企業が削減した残業時間を資格取得の勉強時間に充てることができ、社員の資格取得率及び専門性の向上がはかられたという報告もあがっています。

これらの変化は主にオフィスワーカーと呼ばれる人々の間で顕著にみられます。今後は今まで対面が当たり前であった店舗やサービスも、テクノロジーを導入することによってセルフ化・無人化を促進したり、定型業務の自動化や作業ロボットの導入をはかったりすることで人件費の削減や接触機会の削減につながることが期待されます。

リモートワークの種類

リモートワークの形態は、雇用型と自営型の2種類に分けられます。

雇用型には自宅を就業場所とする「在宅勤務」、施設に依存せずいつでもどこでも仕事が可能な「モバイルワーク」、サテライトオフィス・テレワークセンター・スポットオフィス等を就業場所とする「施設利用型勤務」の3種類があります。

さらにそれぞれ一切出社しない「フルリモートワーク」と、週に何回かは出社する「随時リモートワーク」に分類することができます。

加えて、自営型リモートワークには「SOHO」と「内職副業型勤務」の2種類があります。

一口にリモートワークと言ってもこれだけ種類があるため、様々な事情を抱える人々に多様な就労機会を与えることができるのです。

統計で見る日本における正社員のリモートワークの実情

コロナ禍における2020年のリモートワーク実施率

2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業がクラスターを避けるためリモートワークに移行せざるを得ない状況下となりました。そんななか、コロナ禍におけるテレワーク実施率はどのように変化したのでしょうか?

2020年の緊急事態宣言後4月10日〜12日にパーソル総合研究所が行った調査によれば、リモートワークに移行した企業は全国平均で27.9%と、3月9日〜15日に行われた第一回調査の13.2%に比べ1ヶ月で2倍以上に増加しました。エリア別の統計では緊急事態宣言地域の7都府県で38.8%、それ以外の地域では13.8%であり、「現在の会社で初めてリモートワークを行った」と回答した人の割合は68.7%でした。緊急事態宣言がトリガーになったことと、日本の「テレワーク初心者」がいかに多いかがわかります。

海外のリモートワーク普及率との比較

リモートワーク普及率において遅れをとっている日本ですが、世界各国のリモートワーク事情はどのようになっているのでしょうか。

リモートワーク先進国といわれるアメリカのテレワーク導入率は2015年に「WorldatWork」によって発表された統計によると85%と、非常に高い数値となっています。フルタイムでテレワークに従事している人の割合だけをみても34%と、テレワークという働き方が広く普及していることがわかります。

ヨーロッパは北米と比較するとリモートワーク普及率が低い傾向にありますが、アジア諸国よりは普及しているため、今後もリモートワーク普及率が上がる可能性も残されています。長時間労働の習慣がないイギリスではリモートワーク従事者は24%、労働者を保護する文化の強いフランスでは19.1%、ジョブ・シェアリングが成功しているドイツでは10.9%という結果になりました。

フィンランドをはじめとする北欧では、高緯度のため冬季は日照時間が数時間しかないという気候条件もあいまって、働く時間や場所などを自由に決定できる柔軟な働き方が定着しています。今回の新型コロナウイルス感染拡大で、テレワークに移行した労働者の割合はEUの平均は37%でしたが、フィンランドが最高で60%近くに達しました。

リモートワークの可能性

BIGLOBEが2020年3月13日〜15日に行った「在宅勤務に関する意識調査」によると、「新型コロナの影響で在宅勤務などのリモートワークが日本に定着する」と答えた人の割合は8割強にのぼりました。しかし、その一方でアトラシアンがオーストラリア、アメリカ、日本、ドイツ、フランスの5カ国の企業勤めのナレッジワーカー5,000人以上を対象に行った「コロナ禍によるそれぞれのリモートワーク体験に関する実態調査」によると、日本の回答者はリモートワークをあまりポジティブに捉えていないことがわかりました。

44%の人がリモートワークは難しいと感じており、48%の人が自分の所属する組織がリモートワークに準備できていないと考えていました。さらに45%の人が自宅の作業環境はオフィスよりも人間工学的に劣っていると回答し、25%の子持ちの日本人男性がオフィスでの勤務を希望していました。これには後述する「日本特有のリモートワークの阻害要因」が関係していると見られます。

リモートワークはニューノーマルになり得るか?

リモートワークの阻害要因

株式会社パーソル総合研究所が2020年4月10日〜12日に行った調査によると、テレワークを実施していない企業が実施できていない理由としては「テレワークで行える業務ではない」(47.3%)や「テレワーク制度が整備されていない」(38.9%)、「テレワークのためのICT環境が整備されていない」(17.5%)が上位を占めています。日本でリモートワークが欧米ほど浸透しない理由には、日本特有の文化による阻害要因が大きいようです。

メンバーシップ型雇用が主流

別名「日本型雇用」とも呼ばれるこの雇用形態は新卒一括採用型の雇用システムで、転勤や移動、ジョブローテーションを繰り返しながら会社を支える人材として長期的かつ総合的に育成していきます。
人材配置や人材開発がしやすい一方で勤怠管理が煩雑になり、専門性が高い人材が育ちにくいという課題もあります。高度経済成長期にはうまく機能していたこの雇用スタイルも時代の流れと共にマッチしなくなり、最近では諸外国でメジャーとなっているジョブ型雇用への転換が推奨されています。ジョブ型雇用は勤務時間ではなく成果物のクオリティが重要になるため、仕事さえきちんとこなせばどこで働いても問題ないことから、テレワークに適した雇用スタイルであるといえます。

ハンコや紙書類中心の企業文化

ハンコの押印を以て承認の証とするのは日本の企業文化の一つですが、人の手で押さなければならないことから遠隔でのやりとりが難しくなり、リモートワークを阻害する要因の一つとなっています。
重要書類を紙で管理していたり、ファックスなどの技術に依存していたりする紙書類中心文化も日本特有のもので、オフィスに出社しないと作業が進まないなどの課題もあります。

日本の住環境

日本の住環境は欧米諸国に比べて手狭で、仕事に集中するスペースがないという家庭が大半であるのが現状です。普段はリラックスするリビングなどで仕事を行うため人間工学的に優れていない環境で仕事をせざるを得なかったり、通勤に伴う「オンオフの切り替え」の時間がなくなるため、仕事モードに意識を切り替えるのに苦労していたりする人も多いようです。

リモートワークを行うシステムやツールが不十分

株式会社パーソル総合研究所が2020年4月10日〜12日に行った調査によると、「テレワークのためのICT環境が整備されていない」と回答した人の割合は19.9%にのぼりました。同調査で「現在の会社で今回初めてテレワークを実施した」人の割合は68.7%にものぼり、環境が整わないままリモートワークに移行せざるを得なかった企業が多くみられることがわかります。リモートワークを定着させるためには、Web会議システムやチャットツールの導入などを急ぐ必要があります。

リモートワークのメリットとデメリット

今後ますます注目を浴びるであろうリモートワークですが、もちろん光と影の両面があります。メリットとデメリットについてそれぞれみていきましょう。

メリット

まず通勤時間の削減が挙げられます。今まで通勤に充てていた時間を自己実現のための時間に充てたり資格取得のための勉強時間に充てたりと自由な時間ができるので、結果として仕事の生産性が向上したりモチベーションの向上につながったりします。かつて夜遅くまでオフィスで残業していた人は家族と過ごす時間が増え、ライフワークバランスが向上するでしょう。

企業としては、従業員の様々なライフスタイルに対応できます。例えば、家庭の事情で通勤が難しくなった従業員に対してもリモートワークで対応することで優秀な人材を確保することができ、今まで全従業員に対して必要だった諸経費(デスク、イス、交通費など)が不要になり経費削減にもつながります。

デメリット

勤怠管理が必要な場合は、実際の稼働時間を把握しづらいというデメリットがあります。業務完了を報告した後でもサービスワークやシャドウワークを行っており、あたかも生産性が高くみえるように隠蔽することも可能になってしまいます。

加えて、対面での雑談や会議に比べて情報共有が行いにくくコミュニケーションがとりづらいという点も挙げられます。見えないところでサボってしまう人や、仕事とプライベートの境界がなくなり、オンオフの切り替えができない人も出てくるでしょう。リモートワークを行うためには、出社時以上に目標や業務時間などの自己管理を徹底し、業務に集中できる環境を自ら作り出さなくてはなりません。

今後提唱される新しい働き方

新型コロナウイルス感染拡大に伴うリモートワークの導入は、確かに日本企業に新しい風を吹き込みました。しかし、リモートワークは一部の人には歓迎される一方で、日本に馴染みのない働き方であるためか中々受け入れられないケースもあることは確かです。


今後提唱される新しい働き方は、オフィスに出社してプライベートモードから切り替えて仕事に集中したい人や、地方の自宅でフルリモートで働きたい人、出社日と在宅勤務日を柔軟に選びたい人全てのニーズに対応するハイブリッド型の働き方であるといえます。

現にアトラシアンが行った調査によると、56%の日本人がオフィスと自宅のいずれかの勤務方法を選択できる働き方を希望していることがわかっています。今後少子化や労働人口の減少が危惧されるなかで、少しでも働き手のニーズにあった勤務方法を提供することは日本経済の未来を救うことにもつながるはずです。